天童木工
シェルチェア
「モノがどんどん使い捨てられて、ゴミをつくって行くことが経済の繁栄に繋がるというのは、社会の仕組みとしておかしい。
それにデザインという名目でデザイナーが荷担しているということに気付くべきだね。」
日本のインダストリアルデザインの確立と発展における最大の功労者となったデザイナー、柳宗理の言葉です。
大量生産に伴う大量消費、激しい流行り廃り。
商業主義に偏ったモノや、流行に左右されるモノ。
柳宗理の手掛けたデザインすべてには本来デザインが持つべき強い力を纏っています。
本日紹介させて頂くのはそんな柳宗理が手掛けたアイテム。
美の佇まい
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本日紹介させて頂くのは日本を代表する家具メーカー“天童木工 / TENDO ”のチェア「T-3036SP-ST」。
通称「シェルチェア」と呼ばれるダイニングチェアです。
戦後の山形県旧天童市、大工や建具の職人が集まり、天童木工家具建具工業組合が結成されたところから始まった天童木工。
初めて世界に通用するデザインを生んだメーカーとも言われており、バタフライスツールや低座イス等、多くの名プロダクトを手掛ける名工として知られています。
今回入荷したのは天童木工の為に柳宗理がデザインを手掛けたアイテム。
エレファントスツールやバタフライスツール、コトブキのシェルチェアに並ぶ名プロダクトです。
最大の特徴はバックに開けられた穴。
アノニマスデザインを掲げた柳宗理には珍しく、自らのロゴが冠された珍しいデザインです。
ロゴデザインを押し出しながらもシンプル、且つどこか匿名性を感じさせるデザイン。
それに当たり前に共存するプロダクトとしての使い心地。
柳宗理のデザインの最大のポイントであり魅力です。
デザインのすべてを自らの手で形作り、段々と精度を高める。
デザイナー自ら使うことによって使いやすさを確かめ、かたちのバランスを探る。
柳宗理の手掛けたデザイン的な要素には必ず使い心地が隠されています。
このチェアのこの穴は程よいしなりを生み出す役割をも担っているのです。
確りと身体を支えるシェルは一枚のプライウッドが曲げられたもの。
プライウッドの中央をロゴデザインで刳り抜き両端を中央で重なるように湾曲させることで一体型のシェルに造形されています。
素材感を感じさせるシェルに組み合わされた脚はステンレスパイプ製。
全体のバランスを整え美の佇まいを決定的なものにしています。
美しく形作られたこのチェアは360度どこからみても美しく、特に背後から見たときのシルエットの完成度には誰もが憧れるはず。
「後から見たフォルムが綺麗でなければならない」
柳宗理がデザインに関して曖昧な表現を遺していないように全てのディティールに理由があります。
コンパクトなサイズ感も魅力のひとつ。
片手で持ち上げることが出来る程の軽量さもプロダクトとして魅力的です。
どんな空間にも突出しすぎず馴染んでくれるシェルチェア。
多くのプロダクトで埋め尽くされた現在でも変わらない魅力を持つのは柳氏の「作品の質を長続きさせる」という信念が宿っている為。
美の佇まいを持つ名プロダクトのご紹介でした。
天童木工 柳宗理 シェルチェア A
天童木工 柳宗理 シェルチェア B