TENDO
HACO TABLE
アメリカかぶれ。痛烈に批判されてもなお、日本のデザインを変えようとしたファイター、剣持勇(けんもちいさむ)。
柳宗理・長大作・渡邊力とともにジャパニーズモダンの礎を創ったと紹介されることの多い同氏ですが、そこにはたくさんの葛藤がありました。
だからこそ、ここではあえてファイターと呼びたいと思います。
これが日本のモダンです
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何か新しいことを始めるときには何かしら逆風があるものです。
今でこそ当たり前に目にするジャパニーズモダンもその例外ではなく、戦後間もない日本にとってデザインは海外由来のもの。それが生活の中に持ち込まれることに抵抗や反発は避けられませんでした。
それでも、アメリカでイームズ夫妻に学んだ氏は、新しい素材の探究やそこから生まれる新しいデザインに感銘を受けます。
日本の細やかさや造形感覚、技術を現代に活かすことはできないか。かぶれたのではなく、新しい知識を使って日本独自のデザインを生み出そうとしていたのです。
そうして、ホテルなどの内装を軸に数々の家具を作り出していきます。
この「ハコテーブル | HACO TABLE」は、1961年、国立京都国際会館のロビー用にデザインされました。
天板と脚の成形合板によるシンプルな形状。繋ぎ目のない滑らかなフォルムには、天童木工の技術が最大限に活かされています。
そして、瓦屋根にも用いられる「水返し」と呼ばれる隆起が天板縁を取り囲み、同作の個性のひとつとして特筆されるデザインとなりました(もちろんこぼれた飲み物の水が滴らないようという実用面の意味もあるのだと思います)。
特にホテルは世界中から人が集まる場所。それならば、その国の特徴となる素材や技術、デザインを取り入れたい。
日本のものづくりに対するリスペクトを込めて作られる彼のデザインは、次第に日本のみならず世界へと広がりを見せ、理解を深めていくのです。
日本人が日本人のために作る古き良き伝統を壊すことなく、氏のデザインが加わることで生まれる現代らしい和家具。
和室に似合うだけだった日本の家具が、ライフスタイルの変化に合わせて洋室にも違和感なく並べることができる。モダンへの変貌。
このテーブルもまた、座卓としてではなくアームシェルのようなラウンジチェアやソファとコーディネートしてほしいと思います。
日本に「デザイン」という意識や国際的な感覚をもたらす大きな転換となったジャパニーズモダン。ジャパニーズという言葉には、日本らしさを忘れないという想いが込められているのかもしれません。
とりわけ今回のチーク材は、当時の伝統を味わえる希少なビンテージ品。
よいものを取り入れて発展させるという強い信念をもって、ファイターから父となった剣持勇の戦いの証として迎え入れてほしい逸品です。