Tendo

Vintage Arm Chair

戦後の混乱を乗り越え、家具デザインの価値を追求し続けてきた天童木工。

数々の著名なデザイナーや建築家との協業を通じ、時代を超えて愛される作品を生み出してきました。

その洗練された技術力と卓越した品質は、国内外から高く評価されています。

本日は、日本のモダンデザインを語るうえで欠かせない巨匠が手掛けた、現在では入手困難な希少な逸品をご紹介いたします。

ジャパニーズモダンの隠れた名作

建築家であり家具デザイナーとしても名を馳せた剣持勇氏。

彼は、渡辺力氏や柳宗理氏、長大作氏、水之江忠臣氏らとともに、日本のデザイン界を牽引し、その基盤を築いた第一人者です。

1912年に東京で生まれた剣持氏は、20歳までデザインを学んだ後、ドイツの建築家ブルーノ・タウト氏のもとで椅子の機能性を研究。

この経験が、彼のデザイン哲学の礎となりました。

1950年、日系アメリカ人デザイナーであり彫刻家でもあるイサム・ノグチ氏が来日し、剣持氏と出会います。

意気投合した二人は、日本の伝統的な素材である竹を活かした「バンブーチェア」を共同制作。

この刺激的な出会いは新たな交流を生み、数年後には剣持氏がイサム・ノグチ氏の紹介で、アメリカのデザイン界を代表するチャールズ＆レイ・イームズ夫妻とロサンゼルスのイームズハウスで対面。

その空間に畳や座布団、提灯といった和の要素が溶け込んでいることに衝撃を受け、後に「ジャパニーズ・モダン」という独自のデザインスタイルを確立するきっかけとなりました。

今回ご紹介するのは、剣持氏の代表作である「カブトチェア」に酷似したフォルムを持つアームチェア。

1980年代に生産が終了して以来、一度も復刻されることのなかった非常に希少なアイテム。

特徴は、背もたれから座面へと流れるような美しい曲線と、スチール脚とプライウッド製アームの絶妙なバランスです。

アーム部分には、長い年月を経て深みを増したチーク材を使用。

希少な木材ならではの優美な風合いが魅力です。

また、角度のついたユニークなフォルムも、この椅子を唯一無二の存在へと昇華させています。

経年変化による細かな傷や錆びすらもデザインの魅力を一層引き立てる要素となっています。

機能面においても、昇降機能やキャスターを備えた優れた設計。

座面下のハンドルを回して高さを調整するアナログな機構を採用しており、一般的なガス圧式とは異なり、長期間の使用でも機能が損なわれにくい点が大きな魅力です。

剣持氏は、日本の伝統美とモダンデザインを融合させた「ジャパニーズ・モダン」を確立し、その文化を世界に広めました。

伝統と近代の狭間に向き合い、独自の視点でデザインを築き上げた彼の功績は、日本のデザイン史において極めて重要なものです。

唯一無二の存在感を放ちつつも、あらゆる空間に馴染む普遍的な美しさを備えた剣持氏のデザイン。

本日は、その中でもひときわ希少で独創的な逸品をご紹介しました。