House of Finn Juhl
Pelican Chair
デザイン大国デンマークが生んだ伝説的な家具デザイナー"フィン・ユール Finn Juhl"。
有機的な曲線、繊細なシルエットは独特の美意識を感じさせ、その彫刻のような造形に魅了されたファンは数知れず。
しかしながら、同じくデンマーク出身であるウェグナーやアルネ・ヤコブセンなどの諸作品と比べて、なかなかお目にかかる機会が少ないことから、とりわけプレミアム感が強いフィン・ユールの作品。
今夏開催された「フィン・ユールとデンマークの椅子展」も記憶に新しい、非常にナイスなタイミングでの入荷が叶いました。
異端のデザイナー、始まりのチェア
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ぽってりとしたフォルムが愛らしい『ペリカンチェア Pelican Chair』は1940年、フィン・ユールがまだ28歳だった頃の作品です。
ペリカンが翼を広げ、湖上に着水する様をイメージしたという詩的な一脚。その翌年にはペリカンチェアを発展させたデザインの"ポエト Poet"が生まれたりと、キャリア初期を代表する重要なチェアなのは間違いありません。
フィン・ユールのデザインを特別たらしめているのは、その製作スタイルにあります。
当時のデザイナーたちの多くは、家具工房で構造を学び、自ら手を動かして製作していた職人としての側面がありますが、建築家志向であったフィン・ユールは完全に「デザイン」に特化して家具と向き合っていました。
製作は外部の職人にアウトソーシングするという独自のプロセス。あまりにも独創的すぎるユールのデザインは形にするのに相当腐心したことと思われますが、名工"ニールス・ヴォッダー Niels Vodder"らとの出会いで、並の工房であれば不可能なクオリティを実現したのがフィン・ユールの諸作品なのです。
とはいえ、さすがに当時の技術では大量生産までには至らず、数脚しか製造されなかったオリジナルは目にする事さえ叶わない幻のアイテムに。
半世紀の時を経て、2001年にフィン・ユールの家具を正式にリイシューする"ハウス オブ フィン・ユール House of Finn Juhl"が立ち上げられ、晴れて現代の我々も名作に触れることが出来るようになりました。
良いものを廃れさせたくないという沢山の人の想いが、この小さなエンブレムに宿っています。
ペリカンソファもまた、1940年当時に存在したほかのチェアとは一線を画すデザイン。アイデア先行のようでいて、設計は人間工学に基づいているのも見逃せないポイントです。
私も久々に腰掛けてみましたが、本体の固さ、背中の角度など、人間の動きを自然に支える工夫が詰まっているように感じました。
個性的なフォルムに隠れがちですが、とても数値化できそうにない「心地よさ」の追及も軽視されている訳ではないのです。
その後、より彫刻的なディテールに挑戦していくことになるフィン・ユールの始まりのチェア。
現代を生きる我々の目から見ても、その先進性はまったく色褪せていません。
件の展覧会でも目玉の一つとなっていた希少なオリジナルのペリカンチェア。あの時の感動を、この機会にぜひお手元に。