MODERNICA
Modular Group Sofa
最近は少しずつ暖かくなってきているからでしょうか。少しずつ水分が含まれて、空気が「ぬるく」なってきているような気がします。
冷暖房に頼らずに過ごせる季節になると、薄手のカットソー一枚で、昼下がりに時間を忘れてくつろぐなんて風景が目に浮かびます。
窓は開け放ったままで、吹き込む風に揺れるカーテン。サイドテーブルにはブラックのコーヒーと砂糖たっぷりのドーナツ。日本ならそれに季節の花々が色を添えてくれるでしょう。冬の重い衣類から身体を解き放って、五感で感じる季節。素敵ですよね。
今回ご紹介するのはそんな空気感にピッタリな、デザイナーズアイテム。
よろしければ最後までお付き合い下さい。
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今回のご紹介はミッドセンチュリーの色合いを濃く感じさせるソファ。
名称はモジュラグループソファ。1956年に発表されたアイテムになります。
ジョージ・ネルソンは1908年、アメリカはコネチカット州、ハートフォード生まれのデザイナー・建築家。
ミッドセンチュリーを語る上では外す事の出来ない人物。
個人としてもその実力は高く知られるところですが、チャールズ&レイ・イームズ夫妻やイサム・ノグチといった多くの名デザイナーを起用した人物としても功績を知られる、重要人物です。
プラットフォームベンチ、ココナッツチェア、マシュマロベンチ、バブルランプやユニットシステムのCSS。スッと挙がる氏がデザインしたアイテムはどれも印象的で忘れがたいフォルムを持つユニークなものばかり。そんなジョージ・ネルソンが、円熟の40代に発表したアイテムがこのソファです。
真横に伸びるストレートな線が綺麗なソファ。アームもその印象を損なうことのない、スクエアなものが備え付けられています。
オートミールのような淡いブラウンは、フローリングでもコンクリートでも、和室でも馴染んでくれる優良なカラーリングです。
幅はたっぷりと205センチ。のっぺりとした印象になりがちなサイズ感ですが、背もたれの中心に通ったん縫込みとボタンが、良い具合に視線を集めてくれます。
これが左右に通り抜けてしまうと「背もたれが2つのパーツなのかな」と緊張感は半減しますが、その直前までに抑える事で、手間は掛かりますがアイテムの品格を高める事に成功しています。
あとこれは蛇足ですが使い方として、せっかくの幅なのでフルに使って足を伸ばして寝転ぶ、なんていうのも素敵な使い方かと思います。
シート下には頑強なスチールのフレーム。
今でこそよく見られる素材ですが、1950年代の重い家具が比較的多い時代。たっぷりとしたシートを支える品質と、足元を軽やかに見せるメリットを両立させるのはかなりのコストが掛かっていたことでしょう。
ジョージ・ネルソンは雑誌の編集者から頭角を現し、ローマ賞建築部門の受賞、ハーマンミラー社のデザインディレクターの歴任等キャリアを積んでゆきますが、1924年のイェール大学在学当時はデザインの道に進む事を考えていなかったそうです。
絵を描く事すらままならなかった氏が天啓を受け、受賞までの期間としても僅か5年ほど。かなりの覚悟と没頭、そして努力がないと至れない境地に氏は辿り着きました。
「デザイナーが創造性を生かして人々のニーズに応えるためには、まず、反人間的と思われるあらゆる価値を根底から意識的に壊さなければならない」、「トータルなデザインとは、すべてとすべてを関連づけるプロセスにすぎない」と氏は述べています。
苛烈な時代に培ったノウハウ、考え方が良く表れた言葉だと思います。
市井に溢れる膨大な知識の海から一粒の真珠を探す事をためらわず、
沢山あるモノの捉え方から己が表現したい「見せ方」に最も適した組み合わせを選択する。
燃やし続けた情熱の力と、編集者として培った選択眼。それがソファという形になって、今心地よい空間の中横たわっています。
そんな事を知らなくても、その美しさには変わりがありませんが、このソファはモノとして消費するだけではない「価値」を持った逸品です。
寛ぎのお供をお探しの方は、是非この機会にいかがでしょうか。