FREDERICIA
J39
高価故に長らくショーケースの中に保管されている服や楽器、そして家具。
どれだけ名プロダクトと詠われても使うために生み出されたプロダクトは使わなければ本来の魅力を発揮できません。
実生活で使われる為に生み出される道具のほとんどは美しく使われるためにデザインされたはず。
本日ご紹介させて頂くのは時代と巨匠が生み出した、人々を苦境から救ったチェア。
一部の富裕層ではなく、民衆の為に作られた歴史的名作をご紹介させていただきます。
The People’s Chair
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今回ご紹介させて頂くのは、50年以上にわたりデンマークのクラシック家具を手掛ける名門家具メーカー“フレデリシア FREDERICIA”より名チェア「J39」。
一言でシンプルと言い表せるような無駄の省かれた美しい一脚です。
デンマークデザインといえば機能性と実用性の美しい調和。
J39はこの特長が顕著に表れたチェアです。
デザインを手掛けたのは北欧デザインの巨匠のひとり、ボーエ・モーエンセン。
彼がこれほどのチェアを完成させたのにはある背景が隠されています。
1914年デンマーク西部の都市オールボーに生まれたモーエンセン。
デンマーク王立美術大学家具科を卒業後、彼が師事したのはデンマークデザインの父と称されるコーア・クリントでした。
ここでモーエンセンはクリントの強いデザイン哲学触れることになります。
「過去の歴史・様式を見直し、それを時代の需要にあうよう再構成する」
この哲学は時代を超えても変わることのない説得力を持つ名デザインを生みだすことに。
J39がデザインされたきっかけは彼のデザイン哲学だけで無く当時のデンマークの時代背景も大きく影響しています。
当時は第二次世界大戦後。
豊かな暮らしを求めた人々は地方からデンマークへ移動しました。
しかし急激な人口集中は戦後の貧困を加速させることに。
戦争は終わったものの豊かさは戻りませんでした。
ここでデンマーク政府はデンマーク国民の生活を立て直すべく、復興プロジェクトを立ち上げます。
復興において最重要課題であるのが生活必需品の生産と考えたデンマーク政府は家具を国民に遍く行き届かせるべく家具部門を設立。
この部門の代表に任命されたのがモーエンセンでした。
「美しく丈夫、且つ経済的で機能的」な家具デザインを求めたモーエンセン。
彼が注目したのはアメリカのニューイングランドに住むシェーカー教徒の生活道具と様式でした。
自給自足の生活を美徳とし装飾をそぎ落とした家具を使っていたていたシェーカー教徒にモーエンセンは共鳴。
クリントの哲学でもあった「再構成」を持ってシェーカー教徒のチェアをリデザインしました。
そして1947年。
民衆の為に作られたダイニングテーブル「C18」とダイニングチェア「J39」は完成します。
これらが人々に寄り添ったのは経済的で機能的なポイントだけではありませんでした。
必要最低限のパーツ構成と手編みが必要なペーパーコード。
この構成が市民に仕事を与え歩合制により賃金を支払うことで市民の生活を確保したのです。
八百屋や郵便局員等家具作りとは関係の無い市民も参加したそう。
民衆の為の家具を作り上げると同時に関わる全ての人の生活を豊かにする。
これほどの意味を含むデザインは他にあるでしょうか。
それらが関係してJ39は「みんなの椅子=The People’s Chair」との名称でも親しまれています。
気高きデンマークデザインの意匠を受け継ぎながらも、人々に愛され続けるJ39。
この名チェアはデンマークのベストセラーチェアとしても知られており、誕生から途切れること無く生産され続けています。
座り心地の良さはこれが証明しているのではないでしょうか。
良いデザインとは気取った高価なデザインではなく、美しさに優しさと心地が伴うことなのかもしれません。
人々の為の椅子のご紹介でした。