FREDERICIA
The Spanish Chair 2226
無駄を削ぎ落とし、実用性を追求した結果宿る『美しさ』。
それは、表面的なものでは無く、特定の目的を持って作られた物が、そのポテンシャルを最大限に発揮出来るデザインかどうかで決まるのだと思います。
もちろん、アートとしての美しさも大事ですが、日本でいうところの『用の美』には根源的な美しさが感じられます。
この椅子も、そんな美しさを持った1脚です。
椅子としての『美』
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ハンス・j・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンと並ぶデンマークデザイン界の巨匠“ボーエ・モーエンセン”が1958年にデザインした名作“スパニッシュチェア”。
スペインを好み何度も旅行で訪れていたモーエンセンが、同国の伝統的な一枚革で作られた木製椅子からインスピレーションを受け、自邸用に製作したことから製品化に至った名作の一つです。
同氏の作品として有名なJ39がシェーカーチェアをモチーフにしていることから分かるように、モーエンセンは家具を『庶民の為の長く使える日用品』として捉えていました。
贅沢はせず必要最低限のものだけで生活するシェーカー教徒のマインドに通ずるものを感じていたのかもしれません。
もちろん、スパニッシュチェアにもこうしたモーエンセンのデザイン哲学が取り入れられております。
フレームには骨太のオーク無垢材が用いられておりますが、これは何世代にも渡って使えるようにと丈夫な構造にしたが故のもの。
しかしながら背座には1枚のレザーを採用されている為、どの角度から見ても重たい雰囲気は感じられません。
アームは丁寧に削られており、着座や立ち上がりの際もソフトな当たり。サラッとした触り心地でつい撫でたくなる衝動に駆られます。
この部分にはウィスキーを好んで飲んでいたモーエンセンのこだわりがあり、グラスが余裕をもって置けるように幅が広めに設計されております。
現代においては、携帯電話やマグカップ等を置くのに丁度良いサイズ感。いずれにせよ使い勝手が良い事に違いありません。
やや広めの座面は非常にゆったりとした座り心地。腕の位置も絶妙でホッと一息つくには最高の椅子となっております。
また、贅沢にも1枚の革で作られた背と座は、経年の変化もお楽しみ頂けそうです。
とはいえ、長い年月使っているとレザーのシートは伸びてしまう事がよくございますが、それを解消するのが裏面のベルト。
伸びた分を縮めてあげる事で長持ちするという、使用者に寄り添った造りは大変嬉しいものです。
このベルトはアクセントとなり、他にはない美しさとして表れています。
使い勝手の良さを追求した結果生まれるこういった『美』こそが本当の美しさではないでしょうか。
ちなみに、モーエンセンは当時、車の普及により職を失った馬具職人のため、あえて革を贅沢に使用したデザインにしたそうです。
これによって発注を受けた人々の暮らしも支えていたんだとか。
今回入荷した物は、レザーを専門業者に依頼し新調した一台。
レザーとフレーム両方の経年変化を楽しみながらお使い頂けるお品物となります。
生き方すらも『美しい』ボーエ・モーエンセンの残した名作のご紹介でした。