Fritz Hansen
3318 POT Chair
Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)のチェアデザインって、シルエットと名前が通じ合っているものが多くてものすごくアイコニック。
数字の7、アリ、百合の花や雫、それから白鳥に卵。こうやって文字を並べるだけでちゃんとそれぞれのフォルムが頭に思い浮かぶのだから本当にすごいです。
ただ今回は、それらに比べるとちょっと難解な部類かもしれません。さて皆さんはこの形からどんなネーミングを想像するでしょうか。
引き算の椅子


背もたれの逆台形型が特徴的なこの椅子の名は「ポットチェア | 3318 POT」。薬缶のほうではなく(深)鍋のほうのポットです。
名前を聞けば納得の形。ではあるのだけれど、ヤコブセンにしてはなんだかおとなしめのフォルムだなぁといった第一印象をもつ方も少なくないような気がします(私もそのひとりです)。


SASロイヤルホテルのバーやウィンターガーデンのために1959年にデザインされたポットチェアは実際、同ホテルのロビーやラウンジエリア用として誕生したスワンチェアやエッグチェアと比較すると、よりチェアとしての実用感が強いプレーンな佇まいが際立ちます。
でもこれはおそらく、家具単体のデザインではなくホテルという空間全体をデザインした氏の計算なのでしょう。その証に、軽やかさを加えたラウンジチェアであると解釈されています。


たしかにスワンやエッグのような派手さはないかもしれませんが、北欧らしい洗練されたモダンな雰囲気を感じさせつつもどこかキャッチーな親しみを感じられる。
そして個性の強い椅子たちと共存するべく、丸みのあるシェルの柔らかな曲線が互いの協調を生み、背の低い小ぶりなサイズ感が周りを優しく引き立てる。さらに座れば身体が包み込まれるような安心感を生む。


有名どころの影に隠れながらも名作の一員たる存在感をもったポットチェアが復刻を果たしたのは2018年のこと。
オリジナルには忠実に、現行ではFritz Hansen(フリッツハンセン)社が現代のニーズによりフィットするよう素材に改良を加えたモデルが製造されています。

白鳥と卵を足し算の椅子とするならば深鍋は引き算の椅子。対照的なデザインでありながら互いに異なる魅力をもち、どちらが欠けても成り立たない太陽と月のような関係性といっても過言ではないかもしれません。
そんな同じ空間を共にしていた彼らが独立を果たし、新たな場所でそれぞれの個性を発揮する。
ポットチェアの持ち味はなんといっても溶け込み引き立てる力。ラウンジチェアとしてだけでなく、ダイニングやワークシーンなどあらゆる場所に適応するところに、引き算の美学を感じていただけるはずです。































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