Fritz Hansen
seven chair
家具に求めるのは実用性かデザイン性か、はたまた物語性か。
日々生活していく上では最低限の実用性が備わったうえで、デザイン性や物語性を求めるのが大事のような気がします。
もちろん全部あったら最強ですけども。
というわけで、今回はそれらが全部備わった名作中の名作をご紹介します。
ちなみに私はデザイン性と物語性から求めてしまう生粋の男の子メンタルです。
7とアリンコ
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こちらは ”Fritz Hansen” の 「セブンチェア seven CHAIR」です。
デザインを手掛けたのは建築家でありデザイナーでもあるアルネ ヤコブセン。
自らが設計した建築物に自らがデザインした家具を置き、空間を全てプロデュースする完璧主義の一面を持ちます。
理想の形を追求すべくデザインは勿論、緻密に計算しつくし実用性をも追い求める拘り様。
そんな完璧主義者の血と涙の結晶が形となって世に放たれたのは、1952年、自身初のチェア ”アントチェア” でした。
成型合板による背座一体のチェアとして世界で初めて生み出されたのがアントチェア。
程よいしなりや身体の形状や動きに適応する柔軟性を持ったシートを、プライウッドにて可能にした事は、当時の人々を驚かせました。
そして、3本脚・シートのくびれ。
シンプルながらユニークなデザインも更に心を鷲掴みにしたそう。
しかし、アントチェアには問題がありました。
3本脚による安定性の欠如。
床が不安定だったり重心の掛け方を誤ったりするとぐらつき、転倒の恐れが高まる仕様が3本脚の特徴でした。
ですが、ヤコブセンは”椅子の3本脚と人間の足2本計5本で安定感ある機能は十分果たす”。
と3本脚デザインを生涯貫き、死後4本脚が発表されるまでアントチェアの仕様が変更されることはありませんでした。
そこで、アントチェアの”ウィークポイント”を補うべく発表されたのが、「SERIES 7」。
アントチェア開発から3年後の1955年。セブンチェアが誕生したのです。
アントチェアと大きく異なるのが2点。
まずは前述した3本脚デザイン。
4本脚に変更され、床面の状態に限らず抜群の安定感を齎しました。
そしてシートデザイン。アントチェアは小ぶりなサイズと独特なくびれが特徴でした。
これは適度なしなりと耐久性を上げるための仕様でしたが、身体との接地面が少なく娯楽性に欠けたそう。
そこで、セブンチェアはひとまわり大きくし、身体をキャッチする面積を増やしました。しなりもそのままに。
左右に大きく広がった背もたれがもたれかかった時に背中をキャッチ。
背から座面へ向かうカーブが背中と腰を包み込みホールド感を齎します。
体の曲線に合わせて丸みを帯びているため、背中が当たって痛くなるというようなことになりにくい構造。
長時間座っても疲れにくく、快適な心地よさを提供してくれます。
圧倒的なデザイン性を持ちつつも軽量且つスタッキングできる可能。
薄い9枚の積層合板で構成されたシートの強靭な耐久力。
生活で使われる”道具”としてこの上なく優れている強みであります。
セブンチェアの凄いところ。
十分過ぎる機能性と実用性を持っていながらも、デザインも美しい点。しかも無駄なく。
流れるような曲面、艶やかなくびれ、それらを活かすスチール脚。
これもまた計算と努力を尽くしたヤコブセンだからこそ実現できたポイントです。
原点のアリンコと進化した7。
愛情がつまったアリンコと民の声に耳を傾けて生まれた7。
デザインは似ていますがそれぞれが持つ物語は異なります。
誕生の歴史を知り恋に落ち、実際に触れ作り手の意図に気づいたとき愛に変わる。
椅子としての旨味を全て凝縮したヤコブセンの傑作を、愛情持ってお使い頂けたら嬉しいです。