Fritz Hansen
Egg chair
名作家具として知られるフリッツ・ハンセンのエッグチェア。
今回はそんな肩書を振り払って、まっさらな目線でこのチェアの魅力をみなさんと一緒に見ていきたいと思います。
名作という肩書の向こう側へ。
自分の感覚で見つける、エッグチェアの面白さ。

1872年にデンマークで創業した「フリッツ・ハンセン|Fritz Hansen」。
長い歴史の中で、世界中のデザイナーと協力しながら、時代を超えて愛される家具を生み出してきてたブランドです。
今回紹介するエッグチェアの他、スワンチェア、セブンチェアをはじめとする、今もなお世界中で親しまれている名作を数多く手掛けています。
エッグチェアをデザインしたのは、デンマークの建築家「アルネ・ヤコブセン|Arne Jacobsen」。
建築から家具、照明、テキスタイルに至るまで、空間を構成するあらゆるものを手掛けたデザイナーです。
実は、若いころは画家になることを夢見ていたそう。
絵を描くことはもちろん、写真を撮ったり、植物を観察したりすることも大切な創作活動のひとつでした。
一方で、仕事では細部まで妥協を許さない完璧主義者。
自然を愛する繊細な感性と、理想を形にするための徹底したこだわり。
その両方が、彼の生み出すデザインに息づいているように感じます。
エッグチェアが彫刻のような美しさを持ちながら、座るための家具として完成されているのも、そんな彼らしさなのかもしれません。

まず目を惹かれるのは、やっぱりこのシルエット。
後ろから眺めると、名前の通り大きな卵のような丸みを帯びたフォルムです。
一方で、前から見ると左右の背もたれが描く曲線がとっても特徴的。
まるでパズルのピースのような、独特の形をしています。
少し離れたところから眺めても、壁に映った影だけを見ても「エッグチェアだ!」と一目でわかるこのデザイン。
家具というより、彫刻や現代美術の作品を眺めている時の感覚に近いかもしれません。
見る角度によって印象が変わるので、置く場所や光の当たり方によっても、違った表情を楽しめそうです。

そしてこの特徴的な形により、実際に座ってみると身体がすっぽりと納まるような感覚があり、背もたれは顔の横まで包み込むように立ち上がっています。
周りの景色が少し遠のいて、自分だけの小さな空間に入ったような気分。
物語に入り込みながら読書をしたり、誰にも邪魔されずに考え事をしたり。
ひとりで過ごす時間を、周りの気配から少し切り離してくれるようなチェアです。
卵の中に入ったことはありませんが、殻にすっぽりと包まれて守られている雛のような安心感も体験できます。

忙しい一日の終わりに腰かけて、心をゆっくりとほどきながら頭の中にあるあれこれを整理する。
そんな時間にも寄り添ってくれそうです。

身体を包み込むようなシェルを足元から支えているのは、アルミニウム製のベース。
サテンポリッシュ仕上げのシルバーカラーは、スッキリとしたラインと上品な光沢が魅力です。
たっぷりとした有機的な曲線と、シャープな金属の組み合わせ。
この対照的なデザインが、エッグチェアならではの美しさを引き立てています。

座面は回転する仕様で、座面下のサイドにあるレバーを操作すればリクライニングの強弱も調整可能。
自重による心地よい揺らぎを体感できます。
身体を預けてゆったりと後ろに傾いたり、少し起き上がって座ったり。
その時の気分や姿勢に合わせて、自分にぴったりの座り心地をつくれます。

今回の一脚を語るうえで外せないのが、このパープルのカラー。
鮮やかで目を惹く色ですが、生地には「クヴァドラ Kvadrat」社の「Hallingdal」シリーズが使われています。
手で触れると、ザラっとした感触のしっかりとした織り地。
表面に光沢がないため、色そのものの鮮やかさがありながら、見た目には落ち着きも感じられます。
パープルは赤と青の性格をあわせ持つ中性色。
イエローやオレンジ・ブラウンなどの暖色系にも、ブルーやネイビー・ライトブルーなどの寒色系にも合わせやすく、異なる色味が混在する空間を繋いでくれる色でもあります。
鮮やかなパープルを主役にするのも、他の色と組み合わせて空間全体の調和を楽しむのもよさそうです。

個人的には、このパープルを見ていると、思い切って柄物と組み合わせてみたくなります。
たとえば、白黒のダルメシアン柄のラグやクッション。
エッグチェアのなめらかな曲線に、不規則でコントラストの強い模様を合わせたら、色の組み合わせだけでは生まれない、大人ポップな印象になりそうです。
パープルの鮮やかさが柄の白黒を引き立て、柄の存在感がまたチェアの個性を引き出してくれる。
そんな組み合わせを想像すると、インテリアって奥が深くて面白いなと思います。
もちろん木の家具や落ち着いた色のファブリックと合わせれば、パープルそのものの美しさをじっくり楽しむこともできます。
どんな色や柄を隣に置くかで、印象ががらりと変わりそうな一脚です。

エッグチェアは、整った空間の真ん中に、主役の作品のように飾るのがよく似合います。
でも、物がたくさん集まった芸術家のアトリエのような空間にも、とっても似合うと思うんです。
本や作品、雑貨やアートがあちこちに並び、色や素材が重なり合う。
アイデアやその人の好きなものがギュッと集まったアイデアの宝庫のような、マキシマリズムなお部屋です。
有機的な曲線と鮮やかな中性色を持つエッグチェアなら、そんな賑やかな空間の中でも、周りの物を受け止めながら自然と目を惹く存在になってくれそう。
壁の近くに置いて、照明でシルエットが綺麗に映るようにしてみるのも素敵です。
座っていないときは、壁に浮かび上がる卵のような輪郭を眺めて楽しむ。
少し回転させるだけで影の形もがらりと変わるので、光と影まで含めてひとつの作品のように楽しめます。

ひとつの家具でありながら、居場所としても、作品としても、あなたの生活を彩るアクセントになってくれます。
座るときには身体をすっぽりと包み込み、離れたところから眺めれば卵のようなシルエットが空間に浮かび上がる。
くるりと向きを変えれば、パープルの曲線も、壁に映る影も、また違った表情を見せてくれる。
座っているときも、座っていないときも、見るたびに心をくすぐられるチェアです。
こうして改めて向き合ってみると、ただ美しいだけでも、ただ座り心地がいいだけでもない。
造形の面白さも、色の楽しさも、身体を預けた時の心地よさも。
そして、暮らしに迎え入れた時の心が弾むような高揚感までもが、ひとつのチェアのなかに共存している。
「やっぱりエッグチェアは名作だ」
そう思わせてくれる魅力が、この一脚には詰まっています。































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