FER TRAVAIL
NICOLLE Chair
本日は、フランスのインダストリアルデザインの伝統を、現代の芸術品へと昇華させた" フェール トラヴァイユ / FER TRAVAIL "『 ニコルチェア NICOLLE Chair 』のご紹介♪
伝承のディプロマ


" フェール トラヴァイユ / FER TRAVAIL "は東京・世田谷区世田谷に工房と店舗を構え、森川竜也氏により創業されたインダストリアル家具の専門店です。
同社は元々、抽象彫刻の彫刻家・向井良吉氏のアトリエがあった場所で、またその周辺地域では440年以上の歴史をもつ伝統行事「世田谷ボロ市」が開催されています。
「古い物好き」が集まる街の趣ある建物では、主にフランスやベルギー等で買いつけた工業製品、家具、照明等を専門スタッフがリペア等を行いながら、重厚且つシックで大人びた鉄製品が販売され人気を集めていました。
惜しまれつつ2026年に店舗の営業は一区切りとなり、アトリエを拠点に活動を続けられております。


こちらは、1913年創業のフランスの" シェーズ・ニコル / Chaises Nicolle "が1933年に生み出した、世界で最も古くから生産されている工業用チェアの一つ『 二コルチェア 』を同ショップオリジナルの別注モデルとして販売していた貴重なマットクリア仕上げのオリジナルカラー。

一般的な塗装モデルとは醸し出す雰囲気が異なり、鉄本来の質感や色味の変化を存分に楽しめる仕上がりに。擦れや小さな錆、素材特有の表情を閉じ込め、無機質一辺倒ではない温かみが感じられる静謐な存在感を放っています。


ニコルチェアの歴史は、1913年、創業者ポール=アンリ・ニコルがパリ近郊で金属加工工場を設立し、当時、自社の作業員が快適に作業できるようにと、頑丈で機能的なスツールを自らデザインしたことが始まりです。1933年に3本脚モデルとして正式に製品化され、その3年後に4本脚へと進化。フランス全土の工場やオフィスへと爆発的に普及していきました。
単色のスチール素材でありながら、強烈なアイキャッチとなっているのが、クジラの尾のような背もたれ「ホエールテール」。薄い板をプレス加工して作られ、背を預けると絶妙にしなり腰をサポートする機能美。「一度座ると忘れない」といわれるほど、その硬質な素材のイメージを見事に覆してくれます。
2000年頃になるとフランスの法律の改定により「作業椅子は5本脚でなければならない」という厳しいルールが生まれた事で、突如この椅子の歴史は幕を閉じます。
しかしその数年後、フランスの産業考古学者ジェローム・ルペールが、閉鎖された古い工場跡地で放置されていた当時の工具や金型を偶然発見したことが転機となり、歴史的価値のある名作を後世に残すため、マシンは修復されます。
「90年前とまったく同じ本物の工具と金型」をそのまま使い、100%フランス国内で製造するというスタイルで2009年に奇跡の復活を遂げます。


それは個人の名声のための自己主張ではなく、工業労働者のための道具として生まれた名もなきデザイン。
近代デザインの基本原則である「無駄な装飾を省き、用途に徹した形こそが美しい」という思想が自然と息づいたアノニマスデザインは、「当時の金型と工具」の発見より、模倣品の氾濫なく守られています。
家具製造のプロフェッショナルであり、鉄を熟知するフェール・トラヴァイユが、あえて歴史的名作の別注というアプローチをとった背景からは、単なる家具の仕入れを超えた、技術者・表現者としての深い敬意と明確な意図を感じます。
それは一見、軽量な金属椅子。しかし内側にある過去の偉大なインダストリアルデザインに敬意を払い、日本の空間への「翻訳」をすることに、鉄の重み以上の重みがあります。
「鉄(Fer)の仕事(Travail)」のひとつとして。


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