Pierre Jeanneret
Library Chair
スイスの建築家、ピエール・ジャンヌレ。
近代建築の三大巨匠のひとりとして数えられえるル・コルビュジエの従兄弟であり重要なパートナーとして知られる同氏は、数多くの名デザインを手掛けました。
チャンディーガル都市計画の為に手掛けた多くの作品は再評価され今なお強い魅力を放ちます。
今回ご紹介させて頂くのは同氏の手掛けた名プロダクト。
ライブラリーチェアです。
人々の為のかたち
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独立後のインドの国家シンボルとして計画された、新州都チャンディーガル。
ジャンヌレはこの都市計画の主要監督として建築だけではなく家具など様々なものを設計しました。
このチェアもそのひとつ。
美しい建築と環境に溶け込んだ、美しく佇まう一脚です。
デザインはピエール・ジャンヌレとインドの建築家、Eulie Chowdhury。
印象的なフォルムは他の名作と通ずるものの、このチェアにのみ漂う特有の雰囲気があります。
どこか他の作品とは異なる佇まいは共作だからこそ生まれたものなのかもしれません。
デザインは1959年から60年頃。
構造や仕様の違いから前期・中期・後期と大きく3つに分類されています。
使われながら改良が重ねられた様は不特定多数の人が触れるインダストリアル家具ならでは。
今回入荷したのは後期モデルと思われる1脚です。
角を残したエッジィなフォルム。
プリミティブながら気品ある佇まい。
籐張りの座面は全体の無骨さに繊細さをプラスし、絶妙なバランスを保ちます。
後ろ足のスタート地点とボルト留め仕様であるか否かは製造期を判断する重要な要素。
ボルト留めではない仕様の後期型も存在しているようなので、中期と後期の移り変わり期に製造されたものなのかもしれません。
強度を考慮した独自の改良が良く現れた箇所です。
座面のアールは快適性の追求。
組木などの複雑な要素は排除され、シンプルに昇華されています。
初期型と比べ太く、確りと体重を支える脚。
この箇所からも後期型であることが推測できます。
安定性と強度を求め採用された貫きは初期型に見られない箇所。
デザインを損なうことなく、椅子としての性能が高められていることがわかります。
座の後ろと貫きにはレタリングとサイン。
生産場所・施設についての記載はないものの、現存する後期仕様かつNo.のみのレターのビンテージの個体のひとつがこの一脚の様です。
主材であるチーク材は堅牢且つ美しい経年変化。
杢目や節に抗わない、素材を活かした造りもチャンディーガルの家具の魅力。
この個体も豊かで良い表情を見せてくれます。
特徴のひとつである籐張りの座。
程よいテンション感と通気性が心地よく、快適な座り心地を叶えます。
特有の抜け感も上品な印象を与えてくれます。
よりシンプルで合理的なデザインへ。
使われながら変形したこのチェアはまさにインダストリアルデザイン、人々の為の一脚と言えます。
故に混合した仕様や不明点が個体ごとに異なります。
これらを追求し想いを馳せることもまた、この椅子へのリスペクトと愛情なのではないでしょうか。
静かな情熱を持ち、研究を重ね作られたチャンディーガルの家具。
用いる素材は現地で供給を賄えるもので、巧みな技術は現地の人々が暮らしで培った文化や手工芸から学んだそう。
ジャンヌレの熱心な姿勢は時間を越え、トレンド以上に人々の心を惹きつける家具に形を変えました。
未来に残したい良いものには確りと理由があると感じさせてくれます。
特別で美しい、静かながらあたたかい一脚です。