Herman Miller
Side Shell Chair of PINK
ありがたいことに日々多くの名作に触れされて頂いている、私達インプションのスタッフ。
アイテムごとに異なる、デザイナーやメーカーが込めた工夫やその思いを伝えられるよう、微速前進ながら頑張っております。
世の中には名作が故に、よく見かけるというアイテムもそれなりに存在します。
たとえばウェグナーが中国の文官が使う椅子、圏椅(クアン・イ)をリデザインして生まれたCH24ことYチェア。
他には同じくデンマークの名デザイナー・建築家のアルネ・ヤコブセンがとある椅子に触発されてデザインした、成形合板の可能性を感じさせる1脚、セブンチェア(正しくはその前のアントチェア)。
このような椅子たちは様々なテイストに溶け込み、日々の使用において身体に掛かる負担が少ないという高い機能性をその内に秘めています。
どちらも切れることなく製造が続けられたシリーズだからこそ、様々なバリエーションが生まれて新しいファンを生み続けている。
中にはとても希少な1脚もあり、見慣れている耳年増ならぬ目年増な私達を魅了してくれるそんなバリエーション。
今回のご紹介はそんなマニアックな1脚となります。
ピンク、ピンク、オールピンク!
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この響きに聞き覚えのある方は、かなりのヤングとお見受けします。
今回のご紹介はビンテージのインテリアの中では特にポピュラーな部類になるかもしれません。
レイ・イームズとチャールズ・イームズがデザインした1脚、サイドシェルチェア。
その原型が発表されたのは1948年と、70年以上昔の出来事。
MoMAという名前でよく知られるニューヨーク近代美術館。優れたデザインのアイテムを多く所蔵し、今では所蔵される事が一つの勲章とも呼べるほどの権威を持つ施設・組織です。
そのMoMAが世界大戦後、復興と共に需要の増加が見込まれた家具において、美しく機能的、そしてローコストである作品を募集したコンペティション。
そこで入選を果たした椅子が、今私達がシェルチェアとして手に入れられるアイテムです。
個人的にトピックなポイントは2つ。
一つは当時として自由な成型と、実用に耐えうる強度を両立させた事。
背座一体のシートを成立させるためにコンペ当時は金属素材のシェルにて出品されていましたが、コストの関係もありシェルはFRPへと変わり、1950年にハーマンミラー社から発売。
当初製造を手掛けたゼニス(ジーニス)プラスティック社が手掛けたものはエッジの強度を担保するためにロープを埋め込んだものなどもあります。俗に1stと呼ばれるビンテージですね。
その後、製造・販売がハーマンミラー社に移ってから1970年頃までのモデルが今回ご紹介の2ndビンテージとなります。
ちなみにそれよりも前の段階で世に発表されていたLCW、DCWといったプライウッド(成形合板)による椅子がありますが、これは軍事技術との関わりで進歩した側面もあります。
軽くて丈夫な成型合板はレッグスプリントといわれる軍人が骨折した際使用する添え木として依頼され、実際にデザイナーの二人はプライフォームドウッド社と言う会社を設立しそれに臨んでいます。
FRPという今ではシェルチェアの代名詞ともいえる素材も、飛行機先端のレーダー部を隠すために空軍が研究していた素材。
新しく進化していた技術・素材に関われる立場に身を置いた二人だからこそカタチに出来たアイテムという事です。
そして二つ目はやはり豊富なバリエーション。
何度見ても見慣れない色です。時代が進まないと見掛ける事の出来ない、発色の良いピンク。
それもそのはず、2ndの時期になってシェルチェアで展開されたカラーリングは最初期の6色から11色に増えましたが、それとは別に特別な色があったのです。
それはいわゆるコントラクトと呼ばれる、200脚以上の同時注文によって選択が可能になる特別な色。
コントラクトのカラーは他にも
ターコイズや
ライトブルー、
テラコッタやケリーグリーンなど様々にありますが、その中でもピンクというある意味ショッキングな選択をする顧客は絶対数としてはやはり少なく、見掛ける事はまずない希少なカラー。お目に掛かれてとても嬉しく思います。
※過去お取り扱いがあったアイテムは既に売約済みですが、目の保養のためリンクを張らせて頂いております。リンクを張れなかったFRPのケリーグリーン等他の色にもいつか出会いたい・・・!
レアカラーはもちろん定番カラーも、お買取りのご相談お待ちしております!
座り心地も収まり良く考えられた形。シェルの縁にある折り返しのエッジなど耐久性も良く考えられており、ラフに使える安心感はFRPならでは。
そしてベースと呼ばれる脚部にも豊富なバリエーションがあり、シンプルなHベースやスタイリッシュなエッフェル、ナチュラルなドウェルに重ねても楽しいスタッキング。
タンデムベンチのベースがあれば色違いで並べるなんてことも・・・。
美しく、座り心地の良い椅子は多くあれど、イージーにポップに楽しめる椅子はやはり希少。
名作のポテンシャルを改めて強く感じたアイテムでした。
こちらのピンクも、間をおかずに旅立ってゆきました(お買い求めいただきありがとうございます)。
良い色がありすぎて逆に選べない、そんなお店になれるよう今後とも頑張っていきたいと思います。
もし大切に使ったコレクションを次の方につなげたいとお困りの方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお声をお掛け下さい。
どうぞ宜しくお願い致します。