Herman Miller
DSR Side Shell Chair
今日も今日とて暑い!
いつも繰り返している作業でも、あたまがフワッとした瞬間があったら要注意。暑さに慣れるまでは身体もしんどいもの。このブログをご覧の皆様もどうぞ十分にお気をつけくださいませ。
外出して太陽の光を浴びたあとには、冷房を程よくきかせたクールなお部屋でひと心地。
そんなクールなお部屋に相応しいアイテムをお探しの方にも漏れなくお勧め出来る、素敵な1脚をご紹介致します。
マスターピースとは

DSR。世界を代表するモダンファニチャーブランド、ハーマンミラーによる1脚。
日本では「シェルチェア」と比べるとそれほどメジャーではない呼称を持つ今回のチェア。 「D」inning 「S」ide 「R」od、すなわちダイニング用の座高の、サイドチェア、ワイヤーロッドのベース仕様という事のようです。


シートがアーム付きのものになると真ん中のSはA(Arm Chair)に、ベースなら末尾がS(スタッキング)、R(ロッキング)、C(コントラクト)と変わってゆきます。 言葉の連想がしづらいと、なかなか馴染めない…この呼称が日本でメジャーにならない理由が今少し分かった気がします。

しかし、それほど沢山のバリエーションを持つシェルチェア。製造される環境にもいろいろと変遷があるようです。
まず発表されたのは1948年。ローコスト家具の国際コンペに出展し2等を受賞するもすぐの製造には至りませんでした(この時は金属製のシートであったそう)。
のち製造を実現する素材、プラスティックに出会いハーマンミラー社が1950年に発売を開始。 製造を担当している協力会社も色々を存在しますが、1990年台に入るとひとつの問題に直面します。

当時シートはFRPとよばれるガラス繊維で強化したプラスティックを使用していたのですが、環境問題への意識が高まる中でリサイクルが難しいこの素材を使った椅子は時勢に沿わなくなってしまいました。 そのため、ハーマンミラー社はFRPのシェルチェア製造を中止したのですが、スイスのヴィトラ社が名作の遺伝子を繋げる新たな一手として採用されたのがポリプロピレン樹脂。
耐候性が高く、また独特なしなりを持つこの素材は100パーセントリサイクルが可能な夢の素材。 新しい身体をまとったシェルチェアは新たなテクスチャー、そして特性を持ったマスターピースとして蘇りました。

そのかたち。一体成型でしか成しえない三次曲面の形は素直に美しいと言えます。 ふと腰掛けた時でも座り心地が良い場所へ導かれるようにカーブしているシート。機能的なだけではなく、差し込む光に陰影のグラデーションを付けてくれます。

エッフェルベースと呼ばれる脚部。細いワイヤーロッドをベースとして使うためには強靭な構造が必要であったと想像できます。ですがそれ以外にもシンプルな、Hベース、Xベースと呼ばれる脚部は存在しています。一体なぜイームズ夫妻はロッドを曲げたのでしょうか。
金属の棒であるロッドを複雑に曲げ、溶接を施す。そしてパーツと規格を揃え、耐久性を満たすまでトライアンドエラー。デザインを試行錯誤するだけでも途方に暮れてしまいそうです。
偉大なデザイナーが工夫を凝らし時間をかけて作り出したこの形は、その名の通り建物のような構築美を見せてくれ、複雑な光の反射はシンプルでありながら退屈さを感じさせてくれません。

現在はヴィトラ社からハーマンミラー社が再び製造を担うようになり、生まれ育った場所から生まれたプロダクトにまた会えるようになりました。
今回はシェルにあわせエッフェルベースまでブラックカラーとなった漆黒の1脚。もとより完成されたフォルムを引き立たせる組み合わせは、まるで白黒映画のセピアな世界に飛び込んだような印象を与えてくれます。

心地良く使える事は勿論ですが、関わる多くの人が後世に繋ごうと働きかけた、歴史的に価値のあるチェア。是非使いながら楽しんで下さい。











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