Herman Miller
Cosm chair
先日あった風の強い夜が、色づいていた街路樹の葉っぱを枝先事持っていってしまいました。あっという間に冬のような見た目になってしまって、少し寂しい心持ちでおります。
そんな生き物の気配が少し減った秋口からは、寒さへの対策をしっかりとして天体観測をされる方も多いのではないでしょうか。
今回のご紹介は、まだ多くの人類がたどり着いていない遠い世界を思わせる素敵な1脚です。
地続きな近未来
ハーマンミラー社。ほんの少しでもインテリアに興味があればまずご存知であろうビッグネーム。アメリカのジーランド州に拠点を構え、皆が驚くミッドセンチュリー期から現代までモダンデザインなプロダクトを発表し続けています。
シェルチェア、プラットフォームベンチ、LCWにDCW、モジュラーシーティング、タンデムスリング、CSS・・・あげてもあげてもキリがないハーマンミラーのプロダクトの中には、近年特に人気が高まっているものがあります。
それはデスクチェア(タスクチェア)。終戦後、平和的な電子機器の利用・発達に伴い、コンピュータを用いた事務作業への比重が高まります。
そのため同じ姿勢を長時間、さらにはモニター等への集中を伴う状態は今までに無かった不調を人類にもたらす事になってしまったのです。
それに対してハーマンミラーは、多くのデザイナー達とエルゴノミティクス(人間工学)を研究しプロダクトに反映してきました。
1994年ビル・スタンフとドン・チャドウィックの二人によってデザインされたアーロンチェアは、デスクチェアの傑作として今でも改良を受けて製造が続けられています。
今回はそのアーロンチェアたちと共に最先端を走る1脚。
デザインはハーマンミラーとの協働も多いベルリン発のデザインユニット、スタジオ7.5。
7.5トンの借りたトラックにモデルショップを乗せ、プロジェクトからプロジェクトへと渡りゆくというのが名前の由来だそうです。フットワークの軽さに信条がある事が良く分かるエピソードですね。
さて、デスクチェアに長時間掛けると発生する「不快感」について。アーロンチェアのデザイナー二人はその大きな理由が熱がこもって生まれる蒸れであると突き止めました。
それに対して有効な素材として、アーロンチェアは「ペリクルメッシュ」を採用。弾性と強度、そして透湿性を持つメッシュはその後発展しながら多くのデスクチェアに採用される事になります。
そして、今回の椅子はそれに加えてスタジオ7.5が積み上げたディティールも。
ハーマンミラーから発表したミラチェアに通じる背面フレームは、荷重を面(二次元)では無く奥行のある三次元で分散する仕組み。
そして背もたれと座面の境目は、セトゥーチェアに共通するダイナミックなカーブ。
一体型による幅広いフィットを活かし、背もたれが姿勢に応じて柔軟にしなりやすいデザインは独特の心地よさを提供してくれます。
一般的なダイニングチェアがしっかりとフレームで身体を受け止めてくれるとするならば、このチェアはまるで体重を減らしているような座り心地。
スタジオ7.5が作業に集中出来ている快適な状態を「無重力体験」という言葉で表現しているのがその狙いを良く表しています。ちなみに開発段階ではプロジェクト名はフライング・カーペット(空飛ぶじゅうたん)だったそう。
座面下のボックスは、リクライニングの角度に応じて座面とのバランスを最適にする自動ハーモニックチルト。座面だけのリクライニングでは得る事の出来ない心地よい伸びを可能にしています。
そして今回はヘッドレストが不要なハイバックタイプ。宙に浮かぶメッシュに頭を預けて目を閉じれば、ハードワークでも身体を労われるナイスアダルトな姿の出来上がりです。
ちなみに、シートのフレームはポリプロピレンをガラス繊維で強化したFRP素材。
プラスティックの中でもしなりのよいポリプロピレンに強度を持たせる事で、約16.1kgとハイバックチェアの中では取り回しの良い軽さも達成。
見た目もそれほどメカメカしくないので、ホームユースで馴染む椅子をお探しの方にもお勧めできる佇まいになっています。
必要な機能を研ぎ澄まし、不要な機能をまとめ、使えるシーンをより広くする。
正にこれこそが正統な進化と言えるデスクチェア。便利に様々にマッチする使い心地を存分に楽しんで頂けます。
インプションでも初めての取扱いとなる、宇宙を思い描かせるチェア。
是非この機会にご検討下さいませ。