Knoll
Diamond Chair
戦争の終焉や新素材の開発、異文化の流入により大きな変動が起きたミッドセンチュリー期のアメリカ。
家具などのプロダクトデザインにも大きな影響をもたらし数々の名作が生まれました。
軽やかでそれまでになかったデザインはそのフォルムに反し様々な困難を乗り越えた努力と研究の結晶でもあります。
本日ご紹介させて頂くのはミッドセンチュリーモダンファニチャーを代表する名作です。
空気と鋼の彫刻
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20世紀モダンデザインを体現する家具ブランド“ノル Knoll”が手掛ける「ダイヤモンド チェア」。
スチールロッドで構成された3次元の美しい造形で知られる名チェアです。
このチェアもまたミッドセンチュリー期にデザインされた名作のひとつとして知られています。
デザインを手掛けたのはイタリア系アメリカ人デザイナーであり、彫刻家、そしてサウンドアーティストであるハリー・ベルトイア。
イタリアのサンロレンツォで生まれた彼はアメリカに移住した後デトロイトの美術学校に進学。
多くのデザイナーを輩出したミシガン州のクランブルック芸術アカデミーオブアートで学んでいます。
ベルトイアはこのアカデミーでイームズやサーリネンと出会っています。
卒業後は同アカデミーで金属工房を設立。
学部長として指導にもあたった後カリフォルニアに移り住み、イームズ夫妻と共に成型合板の研究と開発を行います。
ここで彼はワイヤーシェル構造のチェアを発想したと言われています。
イームズの事務所から離れたベルトイア。
美術学校時代からその実力を評価していた友人が経営するノールのデザイナーに転身します。
金属彫刻家としての知識と経験。
これをもって代表作であるダイヤモンドチェアを完成させます。
一本一本異なる長さのスチールロッドを丁寧に曲げ、丁寧に溶接。
美しいかたちは金属造形に長け、溶接技術に天才的な腕前をもっていたベルトイアの傑作であり結晶と言えます。
堅牢性と軽やかさ、見た目の美しさを併せ持ったデザインを彼は「空気と鋼の彫刻である」と言い表したそう。
同素材のサイドチェア、ベルトイアサイドチェアやバードチェアもダイヤモンドチェアと並ぶ名作として知られています。
しかしながらベルトイアが手掛けた家具は少なく、スチールロッドのシリーズしかありません。
以降は彫刻家、そして音響作家としての人生を歩んでいくことになります。
彫刻的な美しさを持ちながら包み込み優しさを持つ。
線の魔術師の異名をもつデザイナーの、その意味を強く感じさせます。