Nelo Möbel Kroken Lounge Chair

曲木（プライウッド・ベントウッド）の家具が好きです。初めは見た目がカワイイというだけの単純な理由でしたが、インプションに入荷する沢山の曲木家具を見ているうちに、知れば知るほど「やっぱりいいな～」と魅力にハマっていきました。 改めて曲木とは、木材に蒸気をあてて柔らかくし、カーブをつけながら成形したもののことを言います。有機的な曲面を作れるところが大きな特徴で、木を曲げることにより強度が増し、耐久性が上がるというメリットもあります。 本日は、そんな曲木の簡単な知識を踏まえて是非ご覧頂きたいラウンジチェアのご紹介です。

プライウッドの造形美―

その先にあるリラクゼーション

>>この商品の詳細を確認する 上質なレザーを用いたソファやチェアを得意とするスウェーデンの高級家具メーカー、Nelo（ネロ） Mobel社のラウンジチェア。同社を代表するデザイナー、Ake Fribytter氏が1970年代に手掛けたKroken（クローケン）シリーズの一モデルになります。 メーカーやデザイナーの名前で検索しても国内での販売記録は極めて少なく、分からない点も多いのですが、知る人ぞ知るレアプロダクトであることは確か。 造りとしては、1965年にデザインされたIngmar Relling氏による名作SIESTAなどと同じく、シートクッションがフレームにロープで結びつけられた着脱可能な仕様となっています。 しなりのきいたプライウッドフレームも用いられ、Relling氏のデザインに少なからず影響を受けていたことが考えられます。 最大の特長であり鍵となるのが、同上の造りに加えてカンチレバー構造を採用している点。 カンチレバー＝片持ち構造のことで、一端を固定し、もう一方を自由端にするという、主に建築で使われる構造のことを言います。 世界初のカンチレバー構造を採用したのは、1926年に発表されたMart Stam氏によるS33サイドチェア。 オリジナルはスチールパイプを用いていますが、同構造を基にプライウッド製の仕様も多く生み出されました。今回も個体もその一つです。 後ろ脚がないため、安定感や丈夫さを懸念される方もいらっしゃると思いますが、ご安心下さい。 冒頭でお話したように耐久性に優れたプライウッドの特質を活かした造りとなっていますので、身体をしっかり支えてくれるとともに、適度な弾力としなりが心地よい着座感を生み出しています。 最初は少し不思議な感覚になるかもしれませんが、座っているうちに段々とクセになるカンチレバースタイル特有の心地良さがあります。 レザーシートとフレームがブラックのワントーンで統一された、高級感漂うシックなラウンジチェア。 ビンテージのレザーソファは特に経年劣化が目立ち、ひび割れを起こしているものも多々あるのですが（それも味として楽しめる場合もありますが）、今回は珍しくビンテージとは思えない程のグッドコンディションでびっくりしました。 本革ならではの肌に馴染むようなしっとり感も健在で、背もたれから座面、アームまで、分厚いレザーが全身を包んでくれます。 元々ヘッドレストが頭部に付いていたようなので、気になる方は別途クッションなどでサポートしてあげて下さい。 画期的な曲木加工技術やカンチレバー構造などにより実現した唯一無二の座り心地。またその快適さが生んだ浮遊感のある軽やかな佇まいは、お部屋に設置しても重苦しさを感じさせません。 個人的にはこの滑り台のように反り返ったアームの先端がお気に入り。しなやかなプライウッドのカーブを活かしたデザインのワンポイントとなっています。 アルテックやトーネット、日本では天童木工など、曲木家具を代表する老舗のメーカーが存在する中で、Nelo社のようなコアなメーカーもまた、それらに負けずとも劣らない細部まで拘りぬかれた魅力的な家具を残していました。