THONET
No.1221 Bentwood chair
今からおよそ200年前の1819年にドイツで設立された家具メーカー「トーネット THONET」。
曲木技術が未発達だった当時、創業者の"ミヒャエル・トーネット"は水蒸気を使って無垢材を曲げる技術を確立、20世紀に入るとその技術は日本にも持ち込まれ、秋田木工や飛騨家具など日本の家具作りに大きな影響を与えました。
トーネットは他にもカンチレバーチェアの発明など今日における家具の製法やスタイルを開拓しており、世界のものづくりにおいて重要なメーカーであるとも言えます。
時が味わい深くする一脚
曲木技術の確立に成功したトーネットは同時にそれまで小規模な手工業で作られてきた家具の大量生産に成功したことでも知られており、パーツごとに分けたものを輸送して現地で組み立てるノックダウン式の採用など商業的観点からも革新的な手法を取ることで、代表作である"No.14"チェアは発表された1859年から70年間で5000万脚、そして現在までになんと2億脚が売れたとも言われています。
今回はそんなトーネットが手掛け、歴史を超えて受け継がれたアンティークチェアのご紹介です。
こちらは背もたれとアームの造形が優美な「No.1221」ベントウッドアームチェア。
良質なビーチ材を用いて作られた曲線的なアームやレッグに、同社のチェアとしては珍しい意匠があしらわれた背もたれを備えたスタイル。
ベントウッドチェア特有の軽やかなスタイルはそのままに、パネルバックがしっかりと背中を支えてくれるためよりゆったりとくつろぐことができるようになった一脚です。
わずかに残った製造時のラベルの断片から判別できた製造時期は1888~1922年、少なくとも100年以上の歴史を歩んできたことが分かります。
つまりこのチェアが生まれた時代の日本は明治~大正時代の間、今年新札に起用された渋沢栄一氏が生きていた時代と考えるといかに奇跡的な巡り合わせであるかが感じられます。
このようなアンティークアイテムでありながら、今回入荷した個体には着座に支障をきたすような損傷やがたつきもなく、座面のラタンは弊社に入荷後、専門業者にて1本1本丁寧に手編みによる張り替えを行っているため安心してお使いいただけるコンディションとなっています。
また、アームやフレームの一部には同じビーチ材を使って補修した痕跡が残されているなど相応のダメージは見られるものの、それほど大切に使い継がれてきたことを色濃く感じさせるポイントとなっています。
トーネットの曲木技術を活かしながらも、背もたれの意匠やレッグ根元のろくろ加工などシックな装飾がプラスされた一脚。
深みのあるマホガニーカラーはUKビンテージなど同時期のアイテムとの相性も抜群です。
実に150年近い年月を重ねてきたトーネットの「No.1221」ベントウッドチェア。
アンティークならではの佇まいで落ち着きのあるシックなインテリア空間を演出してくれそうです。
中古市場でもあまり見ることのできないトーネットの希少な逸品、この機会をぜひお見逃しなく。