GETAMA
GE290
作品としてのデザインではなく、実用性を共存させた家具としてのデザイン。
見た目の美しさと座り心地の融合を追い求め続けた結果、あるデザイナーは生涯に500以上ものチェアを手掛けることになります。
ピーコックチェアやYチェア、そしてザ・チェア。
その殆どが名作と称され、今尚多くのファンを魅了し続けています。
本日紹介させて頂くのは椅子の巨匠が独自の哲学を持って完成させた名プロダクトです。
色褪せない名作
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デンマークデザイン界において最も創造性と独創性に溢れたデザイナー、ハンス・J・ ウェグナー。
今回ご紹介させて頂くのはウェグナーが手掛けた名作であり代表的作品の一つ、イージーチェアGE290です。
家具をよく理解し、生活の道具として常に使いやすさを忘れない。
ウェグナーのデザインスタイルはこのように称されています。
美しいフォルムに隠された実用性はまさにデニッシュモダンの代名詞。
素晴らしい造形を持つこのチェアにも圧倒的な心地が与えられています。
当たり前のように使い心地が伴うデザイン。
それは、彼がデザイナーである前に一流の家具職人であったことも要因の一つと言われています。
使用する材料を知り尽くした上で、材料の特徴を最大限に活かす。
生産が行われる生産工場の技術特性までを把握しており、そのすべてがデザインに反映されていたと言われています。
ウェグナーはゲタマ社の技術特性も把握した上でGE240を設計した様です。
1899年に創業した家具メーカーゲタマ社は創業当時は海藻でベットのマットレスを作っていたそう。
故にGE290のクッション部には長年にわたり培ってきたマットレス製造のノウハウが盛り込まれています。
ウェグナーは自身のチェアデザインをゲタマが持つ特性を持って名作を完成させました。
コイルスプリングによる適度な硬さと跳ね返り。
それらをサポートする座面したのスプリング。
これらが浅く設計された座面と絶妙な傾斜角と相まって安定した座り心地を叶えています。
細やかながら大胆なディティール。
GE290の美はバランスの美しさとそれぞれのパーツの美しさ、どちらにも宿っています。
分厚く大ぶりなアームに大きく後ろにカーブする後ろ脚。
個性を持ちながらも引っ掛かりの無いチェアデザインに、ウェグナーのデザイン哲学を感じます。
フレームはビンテージの個体にのみ現存する良質なチーク材。
経年を帯びた風合いと特有の飴色が美しく、チェアのかたちを引き立てます。
ファブリックはRYGHYNDE社製。
販売当時のオリジナルファブリックです。
ビンテージの個体と考えるとこちらも良好なコンディション。
ウェグナーのことですからファブリックへの拘りも強かったのではないでしょうか。
同じテーマの作品を繰り返し新しくデザインする事で自身の世界を構築し、時代を超えたデザインを完成させたウェグナー。
「私にとってそれは、よりシンプルにしていく作業。4本の脚、座面、背、アーム、そしてそれをつなぐフレームというように、必要最小限なところまで、無駄をそぎ落とすということなのです。」
この言葉の通り彼は削ぎ落すデザイン法を繰り返していたそう。
名作と言われる理由を随所に持ちながらも一切の無駄を感じさせない完成度こそ、今日まで愛される理由と言えます。
デザインの良さとチェアとしての実用性を持ちながら、現在も生産され続けているGE290。
1953年の発表から今日まで色褪せない名作として広く認知されています。
但しフレームに経年美の見れるGE290はビンテージでしか手に入りません。
堅実で実直、素材と使う人、そのデザインに関わる全てに真摯に向き合う姿勢が生み出した歴史的名チェア。
未来に残したい名作のご紹介でした。