Ercol
Originals 1877 Windsor Chair
涼しさが見えてきた晩夏。灼熱の中なら出掛けるのをためらったイベントも、これくらいの気温なら腰も軽くなりそうです。
用賀店にもお越し頂く方もチラホラ。
そんな方々も思わず手に触れてしまう、素敵な椅子が今回のご紹介です。
手を触れて、眺めて
アーコール。イギリスに根付いた人気のファニチャーブランド。
イタリアに生を受けた創業者、ルシアン・アーコラーニが両親らと海を渡り、苦節の末に設立したアーコールは、それまでにない新しいデザインをイギリスに生み出しています。
美しい。それは当然と言えば失礼になるかもしれませんがアーコールのアイテムにはそれに合わせて優れた点があります。
それは大量生産を可能とした「マスプロダクト」であったという事。
優れた数少ない職人による贅を凝らした1脚ではなく、多くの人が手に取る事が出来る「みんなの1脚」であったのです。
例えばそれは第二次世界大戦中の物資不足によって発生したユティリティースキームと呼ばれる潮流。
少ない資源を活用する事を国から求められたアーコールが作り出した4a キッチンチェアは、豪奢からシンプルな美しさへ価値観の転換を後押しする物だったとも言われています。
このチェアがデザインされたのは1945年。その前年には10万脚の製造契約を国から持ち掛けられていたと記録に残っており、その生産力の高さが伺える頃に生み出された1脚。ちなみに今回の個体は座面の下にあるゴールドメダリオンからおおよそ2000年頃の製造と思われます。
ビンテージのフープバックも入荷していましたので並べてみました。
こうしてみると、同じウィンザーチェアのカテゴリーでも少しずつ違う事が分かりますね。比較してみましょう。
フレームはフープバックは四角く、今回の1877はなだらかなカマボコ型。
スポークはフープバックが4本、1877は6本となっています。
シートの幅は1877の方が広めの約45センチ(フープバックは約40センチ)。
座面にはなだらかな座繰り(ざぐり)が施されているのでどちらも心地よく腰掛けられますが、背もたれの角度が違うのでより安楽性を求めるなら1877の方がお勧めです。
逆にフープバックはちょっとダイニングに緊張感を残したい方やキッチン等のインスタントな使い方、コンパクトに使える椅子をお探しの方にお勧めです。
座面はどちらもエルム材。ちなみに現行はイギリスで育った認証を得たアッシュ材に変わって製造されています。
比較的安価で堅牢、木目の表情が良いエルム(ニレ)材は、街路樹等でも馴染みのある木でしたが、1970年頃に起きた立ち枯れ病という木の病気もあって使用が難しくなってしまっています。
材が変わっても造形の美しさに変わる事はありませんが、より当時の雰囲気を楽しみたいならこだわってみたいポイントですね。
半世紀を優に超え、今でも作り続けられるウィンザーチェアの一つの完成形。
心地よく使いながら、その美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。