artek
611
北欧モダニズムを表現し”北欧の賢人”と謳われた アルヴァ・アアルト 。
「有機的でシンプル」という本来交えない領域を融合させたことは、現代のデザイン界にも大きな影響を与えています。
素材の良さに造りの良さ。
今回はそんなフィンランド家具の歴史を紐解きながら、アアルトの作品をご紹介したいと思います。
北欧モダニズム
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時は戦争により国も人も疲弊していた1900年代前半。
バウハウスデザイン台頭もあり、少ない資金で大量の実用的な物を生産する”モダニズム”が浸透しつつあった時代でもあります。
”安価でシンプルで機能的” を実現する上で最適な素材として金属やコンクリートが多くのものに採用されていました。
そんな時代だったため、木を使用したデザインは古いしきたりとして、時代遅れだと見捨てられつつあったそう。
急激な木材離れに危機感を持ったアアルトは、自然の美しさを保ちつつ機能的なデザインを実現する道を模索します。
最初に目を付けたのが素材の選定。フィンランドは小さな国土面積ながら70%が森林と自然豊かな国でした。そのほとんどが白樺(バーチ)の木。
バーチ材が持つ性質。それは、硬質で杢目が詰まった強度。表情豊かな縞模様の優しい風合い。
アアルトが目指す モダニズムを体現する上で最適な素材だったのです。
更に、金属やコンクリートに負けないため、大量生産が出来るよう生産工程に工夫施しました。
多くの人の手に渡る量産品を作るため機械を使用し工場で製造を開始。ただこれは、完全機械によるオートメーション化でありません。素材の選別から仕上げまで、熟練された職人のクラフトマンシップと合理的な機械化を組み合わせた製造工程により作られています。
職人と機械の融合は新たな形で大量生産を実現。
さらに耐久性や実用性など持続可能性の高さを備えつつ、白樺本来の表情の美しさをも併せ持つことにも成功したのです。
大量生産=消費の意味合いが強いですが、アアルトのプロダクトからは全くそれを感じさせません。
実使用には必要の無い部分を削ぎ落したシンプルなデザイン、”ユニーク”ではなく”合理性”の高い有機的な佇まい。
硬質で耐久性の高い白樺、年月により味わいを増す経年美。
実用性、そして個体が持つ表情の変化は、使い手に飽きを来させず永続的に使用できる(したくなるまたは気が付いたらしている)魅力を持っております。
「白樺の選定・新しい生産工程・合理的なデザイン」これは、アアルトが示した近代モダニズムのカタチと言えます。
こちらの『611 ダイニングチェア』。他の椅子とはひと味違った魅力を持っています。
丈夫なバーチ材のフレームとリネンのウェービングテープによって形づくられている椅子。ウェービングベルト仕様の背座は、心地よく沈み込み快適な着座を実現しダイニングチェアながら娯楽性の高さを感じさせます。
ウェービングのグレー系の色合いもバーチ材との相性抜群でナチュラルな風合いを醸し出しています。デザインも素材の良さを最大限活かすシンプルデザインとなっており、空間に溶け込みながら優しさや温もりも与えてくれるでしょう。
更に、優れている点が2つ。
1つはウェービングは交換が可能なこと。汚れたり破れたり伸びてしまったりした際に専門の業者さんに依頼すれば張替えが頼めるので、何年か経ったら交換という選択を取ることができます。
新品で購入し直すよりも張り替えの方がお財布に優しいのは勿論、張り替えるだけで新品さながらの座り心地をまた再度実感することができで、何代にも渡り使い続けることが可能です。経年により風合いを増したバーチ材の美しさも体感でき、飽きが来ない点も魅力的。
2つ目はスタッキングが可能なこと。
娯楽性の高いダイニングチェアはクッションなどを使用しスタッキング出来ない仕様がほとんど。ですが、661チェアはウェービングを採用しているので、座面と座面の間に無駄な干渉がなく、すんなりスタッキングすることが可能。縦に重ねられるので幅を取ることなく収納できます。
リラックスできるダイニングチェア、急な来客時にパッと出せるスタッキングチェアの良いとこどりした611チェア。
「建築は家具と補完し合うもの」
実際に使用する場面での不満や希望を確りと理解していた建築家のアアルトだからこそ生み出せた作品なのかもしれません。
自然と職人の力で新たなモダニズムを体現したアアルト。
機能美を兼ね揃えたフィンランドデザインの家具の名作の数々は、人々の生活をより良くし美しく彩ってくれます。
アルテック創業時から変わることなく生産され続けている、「611チェア」。
アアルトの哲学を感じられる名作のご紹介でした。