軽井沢彫 整理箪笥
暑さはとうに過ぎましたが、避暑地の話を。
避暑地といえば軽井沢。
その誕生の歴史は古く、明治時代にまでさかのぼります。
1886年、軽井沢を訪れた宣教師“アレキサンダー・クロフト・ショー”氏が美しい自然と気候に感嘆し、その夏避暑に訪れたのが最初と言われています。
後に自身の別荘を建て、友人などの宣教師も後を追って別荘を建て始めてから避暑地としての軽井沢が始まりました。
日本の伝統に触れる
さて、今回ご紹介するのは、長野県の伝統工芸品「軽井沢彫」の箪笥。
“避暑地としての軽井沢”と、この軽井沢彫にはちゃんと関係があるのです。
軽井沢彫の始まりは、別荘が建ち始めた当時、外国人の別荘に使用する家具として作られたことにあります。
当時の欧米人たちは木彫り細工の装飾を好んだため、その頃日本で最も華麗な木彫細工のひとつを作っていた日光の木彫り職人が軽井沢に訪れたのだそうです。
正面にそびえ立つ桜の木はまさに圧巻の一言。
職人による繊細な手作業が覗えます。
そして彫刻は天面、両サイド、さらには背面にまで。
どこから見ても美しく、箪笥である以前に芸術作品として見入ってしまいます。
彫刻の隙間を埋めるように施された細かな点は「星打ち」という軽井沢彫の特徴的な技法。重厚感と立体感がより一層感じられます。
箪笥自体はシンプルなつくりで、使い勝手の良い仕様。
抽斗は全部で7段で、最上段の抽斗は2杯に分かれています。
収納力は申し分ありません。メインの収納として活躍しそうです。
当時の職人たちは、西洋家具の形式に日本古来の技法を融和させ、新しい家具を生み出しました。
落ち着きのある佇まいで、しっとりと空間に馴染んでくれそう。
ですが、敢えてポップなカラーリングのインテリアと合わせてコントラストを楽しむのも良さそうです。
世界に誇る日本の高い技術力と芸術性に触れられる作品。
伝統工芸の趣を味わいながら、ぜひ気負わず取り入れていただけたら嬉しいです。