三谷龍二
木の器と道具
木材で作られた建物や家具、器やおもちゃ。
プラスチックや金属などの素材には無い、柔和で温かみのある色味や素朴な手触りには自然と心惹かれるものがあります。
人工物に囲まれた現代で、自宅に一つでも無垢の自然に触れられるアイテムがあると、ホッと気持ちが安らぐような気がします。
残すということ
本日ご紹介させていただくのは木工デザイナーで福井県の人気作家、"三谷 龍二 Ryuji Mitani"氏の作品たち。
陶磁器のように普段使い出来る食器を製作し、家具中心だった木工に新たな分野を開いた三谷氏。
同氏自ら一点一点手作業で無垢の木材を刳り出し、暮らしに寄り添う木の器を作っています。
今回入荷したものは、チーク無垢材の長角盆に山桜の大きな浅鉢、同じく山桜の豆鉢に角皿、バターケースにカトラリーたち。
日本の伝統的な和の雰囲気を纏いつつも、現代のモダンな食卓にも馴染むボーダーレスなデザイン。
シンプルなルックスが無垢材ならではの木の温もりを引きたて、洋食器と組み合わせても映える逸品になっています。
表面の立体感のある模様のような独特の削り出しは鑿跡(いりほが)と呼ばれるもの、刀傷をあえて残すことで手仕事ならではの大らかな表情が生まれています。
仕上げには、木そのものの素材感を生かすのに最適な“オイルフィニッシュ”を採用。
時間が経つにつれ乾燥していくこの仕上げは、オイルを塗り込む手入れが必要な仕上げではあるものの、そういった手間暇がかかることも一つの魅力と言えます。
乾燥と保湿を繰り返しながら使い込む事で、深みのある風合いが生まれ、使うだけでなく育てる楽しみも味わうことができます。
生活に密着している「食」、そして食には「器」や「道具」が必要。生活が変われば、ものも変わります。
そういったものが残るには愛着が必要だと考えますが、近代的なアイテムは移り変わりも早く、愛着を持つ暇が無いように思います。
最近では古道具や古家具、工芸や民芸品を取り入れた生活をする人をSNSで見ることが増えた気がします。
およそ100年前に柳宗悦が提唱した民芸が今人気なことも、ものはもちろん、言葉が残ってきたからなのではないでしょうか。
近代的な生活をしている人が休みの日に山登りや森へキャンプをしに行ったり、川や海へ行って泳いだり、釣りをしたり、自然を前にただボーッとしてみたり。
無機質な物が多く生活に入ってきた今、その反動で、もう少し身体的に馴染みのいいものを無意識に求めているのではないかと感じたり。
そういう意味では、人間が存在する以上、デジタル化が進めば進むほど、工芸的なものは残っていくように思います。