特集:イームズのマスターピース、シェルチェア

UPDATE: STAFF:トリス
特集:イームズのマスターピース、シェルチェア

特集:イームズのマスターピース、シェルチェア

UPDATE: STAFF:トリス

群雄割拠

朝方にかけて小降りがありましたが、その雨が上がってからは程良く過ごしやすい気温になっています。 ゴールデンウィークも中盤戦。有給休暇を駆使して嬉し恐ろし10連休の方もいれば、私のように通常のお仕事に励んでいる方もいらっしゃることでしょう。そんなご同類の方々(というのも失礼でしょうか)につきましては、どうもお疲れ様でございます。 さて、今祖師谷大蔵店にはちょっとしたイームズプロダクトブームが来ております。 早くも旅立ってしまったアイテムもありますが、シェルチェアに関しては今がベストなアイテム数。 ご紹介の今がまさに、眺めて座って選べるチャンスです。 今回のご紹介が連休中の読み物として、そしてお探しの方につきましては参考の一助になれば幸いでございます。

Pick up items

ご存知の方も多いデザイナー、イームズ。レイ、そしてチャールズの二人によって作り出されたアイテムは実に様々。 チェア、テーブル、収納といった家具はもちろんモビールや玩具、ラジオといったインテリアプロダクト、業務用品、建築、映像作品までその足跡は燦然と輝いています。 今回はその中でも一番取り入れやすく、そして使いやすい。 人気の"シェル"チェアのご紹介です。

Herman Miller Side shell Chair Ochre Light

まずはスタンダードなサイドシェルチェアから。 ビンテージのシェルチェアとして取り扱われているプロダクトは、おおよそ3つの時期に分けられます。 ゼニス(ジーニス)プラスティックが製造し、ハーマンミラーが販売した初期のもの(1st ファースト、1953-1955年)。 ハーマンミラー社がゼニスより製造権利を取得し、多くのバリエーションが展開された時期(2nd セカンド、1955-1970年)。 取り換え可能な脚部との接合部分(マウント)の規格が統一され、いったん製造が中止されるまでの時期(3rd サード、1970-1990年)。 年代が昔のものほどビンテージとしての価値は上がりますが、実用性には大きな違いが無いのが嬉しい所。 3脚あるサイドシェルのうち、このチェアの色にに付けられたオークル(Ochre)は直訳すると「黄土色」。今回はおおよそ1958、1959年あたりの製造と良い時期なのですが、ある程度の数が見られるカラーなので比較的リーズナブル。 イエローだとちょっとポップすぎる、ホワイトだとちょっと味気ないと思う方に丁度良いナチュラルなバランスですね。 ワイヤーロッドをカッコよく束ねたエッフェルベースは、ざらりとした質感のジンクカラー。 色味を整えつつ、ちょっとした外しとしてシャビーなお部屋に置いても面白そうな1脚です。

Herman Miller Side shell Chair Elephant Hyde Gray

セカンドの時期が始まるまでは僅かに6色であった取り扱いは、ハーマンミラー社が各地の工場で生産をし始めた事もあってか30色以上に増えています。 ですが「ファースト ジェネレーション シックス」と呼ばれる初期の色。それはツウ好みとしてお探しの方も多いカラーなのです。 その中でもレアと呼ばれるエレファントハイドグレーの1脚。直訳すると「ゾウ革の灰色」。うーん、ストレートなネーミングですね。 基本的にロゴマークに関してファーストのものはステッカー、セカンド以降はエンボス加工(型押し)となってゆくのですがその過渡期に存在するのが今回の「エンボスレス」。おおよそ1959~62年頃の製造とされています。 細やかなグラスファイバーと組み合わさり、ダークトーンながら不思議な軽やかさがあるのも人気の理由かもしれません。 コンディションに少し難アリではありますが、レア度からするとかなりリーズナブル。通に刺さる逸品をお探しの方は是非いかがでしょうか。

Herman Miller Side shell Chair Orange

そして今回一番アメリカンな感じのするオレンジカラー。ポップな色が欲しいという方はこれで決まりでしょう。 セカンドの時期あたりから採用され始めたスタッキングベースによって公共施設での利用にもマッチ。そしてシェルそのものの高い耐久性も相まってアメリカ各地で見かけるようになってゆきます。 個人的にも西海岸なテイストに合う椅子と言われたらこのモデルが思い浮かびますね。 グライズと呼ばれる脚先にもいろんなパターンがあるのですが、今回はスタッキングベースの初期に見られるメタルグライズ。インダストリアルな雰囲気を漂わせます。 ヘビーデューティーなタイプがお好きならイチオシな1脚です。

(※こちらはアームチェア3脚での1枚。こうして並べると真っ赤なお鼻の顔、もしくは連れ去られるUMAに見えてくるのはヒトの認知の不思議なところです。) ここからはビンテージの王道を行く2脚をご紹介。 シェルチェアの原型は、1948年 MoMAによって開催された国際ローコスト家具コンペで発表されました。 一体成型のシートが見せる新しい時代の波が評判となったのは想像に難くありません。 コンペ時アルミ素材だったシートはコストの関係でプラスティックに置き換わり、そして不足する強度を担保するために使われたのがガラス繊維。 繊維で強化されたプラスティック、すなわちFRPを使う事で販売に辿り着いたのです。 ちなみにこの特徴的なガラス繊維よりプラスティックの方が割高だったのか、初期モデルに多くガラス繊維が封入されています。 スノーフレーク(雪の結晶)と例えられる豊かな表情、そして歴史も一緒に楽しめるのがファーストビンテージの魅力です。

ZENITH / Herman Miller Arm shell Chair Orange

なんと2脚もあるファーストのビンテージ。まずはオレンジカラーから。 経年の退色はありますがそれがなんとも言えない柔らかな雰囲気です。 シートシェルに取り付けられる脚部は年代を経て細く強靭なワイヤーロッド、そして中空パイプなどが用いられるようになっていくのですが、このXレッグは鋳造の脚。 接続するマウントも一際大きく、製造初期の試行錯誤を良く感じさせてくれます。 また強度不安を解消するためか、シートの端にはワイヤーのロープが裏側に埋め込まれています。 セカンド以降のモデルと比較するとズシっと重く、それもまたマニア心をくすぐってくれる。そんなザ・ビンテージの1脚。

ZENITH / Herman Miller Arm shell Chair Parchment

そしてこちらはパーチメントカラー。直訳すると羊皮紙(ようひし)色。羊の革を削って作られる西洋由来の紙の名前が付けられています。 もとはベージュ系の色味ですが、経年によってオークルライトよりも濃い色味になっているのが淡色系の味わいポイントですね。 時期的に少しあとのモデルのためロープは無いモデル。後年ペイントされたと思われる白いXレッグはビンテージの「古臭さ」を減らしてより軽やかな印象になっています。 先ほどの1脚はオレンジにブラックとミッドセンチュリーらしい組み合わせですが、ナチュラルなパーチメントならばホワイトの方が良いバランスかと思います。 座り心地にほとんど違いはみられませんが、マスプロダクトとして常に最適なコストを考えていた事が伺えるつくり。知識があって、もしくは並べてみてわかる些細ですが大切なポイント。 先述のファースト ジェネレーション シックスの1色ではありますが、手が届きやすいパフォーマンスの良いお値段も嬉しいところ。 実物の雰囲気重視の方にもお勧めしたいレトロな1脚です。

そしてまずはチャレンジしたい!という方にお勧めしたいグッドパフォーマンスの2脚が最後のご紹介。 日本に初めて持ち込まれたシェルチェアは剣持勇氏と猪熊弦一郎氏がイームズから贈られたもの(しかもイサム・ノグチ氏を介して!)という事ですが、名作の評判はやはり広がり、1964年に百貨店の雄でもある伊勢丹が設立した子会社においてイームズのプロダクトを取り扱う運びとなりました。 その会社モダンファニチャーセールスがおおよそ1986-1999年の間、ライセンスのもとに製造したのがこの2脚。国内生産のシェルですが、座り心地は快適の一言。日本市場向けの座高設定などもありことさらに使いやすいデザインになっています。 使ってこそデザインを楽しめるというガシガシ実践派の方にも、そして山ほどあるバリエーションの中から好みを見つけてくれた方にも自信を持って送り出せる逸品です。

Herman Miller / M.F.S. Side Shell Chair

FRPのシェルに、ウレタンクッションとファブリックをまとわせたアプホルスター(布張り)。 一体成型の美しさを保ちながらより安楽性を高めたモデルです。 ホワイト系のシェル、エッジを覆うモールはグレー、そしてファブリックはマゼンタと90sを感じさせてくれるナイスなカラーリング。 張り替えを行っているので今がベストなコンディション。ふかふかな座り心地で楽しめます。 一番シンプルともいえるHベースは壁付けにしても背もたれが付かないウォールガード仕様。 ひとやすみ用の店舗什器としても素敵な1脚です。

Herman Miller / M.F.S. Arm Shell Chair

そして最後はアームシェルチェア。 腕を預けられるアームシェルに、組み合わされたのはキャッツクレイドルベース。あやとりという意味合いですが、これによってラウンジチェアさながらの高さに。 ダイニングのシェルが、ベースを変えてラウンジチェアになるという事も驚きですが、それでなんら違和感がないのにも驚きです。 座面にはナウガハイドと呼ばれるアメリカ製のビニールレザー。あまりの質感の良さからナウガという架空の生き物の革という説明がされる程のクオリティ。 より高く感じるお部屋の天井を見ながら是非寛いで頂きたい、そんな1脚です。

最後に

いかがでしたでしょうか。 時代、色、ベース、仕様と千差万別でありながら、そのどれもが魅力的なシェルチェア。 一度見て「おっ」と感じて頂けたなら、お家で使うごとに「おお」とその満足が高まっていく事間違いなしと言い切れる、インプションとしても信頼のあるマスターピースです。 選ぶのは大変な事でもありますがその分楽しく、そして選んだからこそ生まれる愛着もあります。 是非祖師谷大蔵店にお越しの際は座り比べてみて下さいませ。また遠方の方もどうぞお気軽にお問い合わせ下さい。 良い椅子が見つかりますように。
特集:イームズのマスターピース、シェルチェア

LOCATION

取扱い店舗

ARTICLE記事の一覧