松本民芸家具
T型 ライティングビューロー
松本城の黒く静かな佇まい。北アルプスを背にした澄んだ空気。城下町として積み重ねてきた歴史と文化。
松本には、派手さではなく、長い年月をかけて育まれてきた“美しさ”があります。
その美意識は、街並みだけではありません。
人々の暮らしの中にも、静かに息づいています。
その代表ともいえるのが、「松本民芸家具」です。
暮らしの中に息づく“用の美”

柳宗悦が提唱した「民藝運動」に共鳴した職人たちは、使うほどに味わいが深まり、何十年と暮らしに寄り添う家具を生み出しました。
華美ではない。けれど、どこか気品がある。堅牢で、実直で、そして美しい。
それはまるで、この町そのものを映しているようにも感じます。
今回は、そんな松本が誇る伝統工芸「松本民芸家具」の「T型 ライティングビューロー」をご紹介します。

松本民芸家具を語るうえで欠かせないのが、ミズメザクラという木の存在です。
戦後の混乱のなか、中央木材工業の手元に残されていたのは、建築材として広く使われていた松材でした。
しかし、より丈夫で、より長く人の暮らしに寄り添える家具を求めるなかで、職人たちはミズメザクラへと辿り着きます。

硬く、粘り強く、年月を重ねても反りや歪みが生まれにくいその木は、古くから“百木の長”と呼ばれてきました。
静かな強さを秘めた木です。
そして、その木の息遣いを損なわぬよう、表面は自社開発の特別な塗料で丁寧に仕上げられています。
木肌は閉ざされることなく、ゆっくりと呼吸を続けていくのです。
時を重ねるごとに、艶は深まり、色合いはやわらかく変化していく。
人が歳を重ねるように、家具もまた、美しく育っていく。
松本民芸家具には、そんな時間の流れまでも慈しむ美しさがあります。


そうして生まれた松本民芸家具には、ただ“使うため”だけではない、美意識が静かに宿っています。
その思想をかたちにした家具のひとつが、「T型 ライティングビューロー」。
書き物をするための机――ライティング。
そして、暮らしの道具を収めるための収納――ビューロー。
その二つをひとつにしたこの家具は、華やかに主張することなく、日々の暮らしへ自然と溶け込んでいきます。


普段は、奥行きを抑えた端正な佇まいのキャビネットとして、静かに空間に寄り添う。
けれど必要なときには、そっと天板を引き出し、小さな書斎のような場所を生み出してくれます。
手紙を書く時間にも、読書の合間のメモにも、ちょうどいい距離感を与えてくれます。
使う人の暮らしを邪魔せず、それでいて確かに支える。
その慎ましくも凛とした佇まいには、松本民芸家具が大切にしてきた“用の美”が、静かに息づいているのです。

日々の暮らしにきちんと役立ちながら、決して飾り立てることなく、美しくそこに在る。
その佇まいには、柳宗悦らが見出した「日本民藝運動」の豊かな精神が今もなお脈々と息づいています。
使うためにつくられたものが、いつしか人生の風景の一部になっていく。
遠い故郷の景色を、ふと思い出すように。
何気ない日常のなかで、その美しさに気づく瞬間がきっとあるはずです。
ぜひ、松本民芸家具の心地よさと静かな美しさを、暮らしの中で味わってみてください。































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