UK Vintage
Church Chair
インプションに入社して、有名なブランドやデザイナーの名作家具、高額なビンテージ家具などなど次々と刺激的な家具を目の当たりにし、圧倒される毎日。そんな中、私の心を大きく揺さぶったのは、一脚のチャーチチェアでした。
一際激しく色が剥げ、脚は傷だらけ、背面のボックスは使い古され、フレームは明らかな隙間や歪みがある状態。決して座り心地の良い椅子とも言えません。
しかしそれは、この椅子の見てきた景色や環境、経験によって生まれた味わい深い表情。哀愁漂うおじいさんのように見え、片隅でひっそりと佇むその姿に一気に心を奪われました。
どんな場所でどんな人に使われ、どんな景色を見てきたんだろうと想像すればするほど、深みと魅力が増すばかり。人間にもその人の性格や経験からしか出せない人間味を感じるように、この椅子に対してもなぜか「人間味」のようなものを感じたのを覚えています。
探そうと思えばいくらでも出てくるであろう形の椅子ですが、経年によって生まれる表情や歳の取り方は、人間同様二つとして同じ物はありません。
家具ではなく人との出会いのような、素敵な経験をさせてくれた一脚でした。