hiromatsu
BLOCCO TV Board
今日撮影前に、掃き掃除をしていたら桜の花びらが迷い込んでいました。気が付けば4月も半ばに差し掛かり、桜も散る季節となりました。
引き続き大っぴらな花見は難しい情勢にありますが、このブログをご覧の皆様は今年、桜を楽しめたでしょうか。
毎年季節は廻り、古いものから大切なものを受け継いだ新しい何かが現れる頃合い。
今回のご紹介もそんな時代の繋がりを感じられる1台。
宜しければ最後までお付き合いくださいませ。
禁欲と節制の違い
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今回のご紹介は、広松木工よりAVボードです。
広松木工は1950年、家具の生産地として有名な福岡県は大川市に創業しています。
大川は筑後川の河口にあった事もあり、切り出した木材が水運で集まる集積地でした。そこに船大工の技術を活かした指物(釘などを使わずに作る家具や建具)が勃興。
明治時代には独自デザインの箪笥が高い評判を呼び、「箱もの」と呼ばれる家具類はその後も評価される名産となりました。
高い技術、そして豊かな経験を保有する大川家具の中でも高い人気の広松木工。その要因として、アメリカで独自に発達した様式であるシェーカー家具があります。
シェーカーは18世紀後半から19世紀に掛けて隆興したキリスト教プロテスタントの一派。厳しい教義の中で培われた自律心は、共同生活を営む上で必要な家具にも影響を与えました。
機能を持たない虚飾(きょしょく)を極限まで排した家具は、現代のミニマリズムにも通じる繊細な美しさ。FDBモブラーやハンス・J・ウェグナーといったデンマークのアイテムにも影響を与える程の高い完成度を持つシシェーカー家具。
広松木工はそのシェーカー家具を範の一つとして、現代にアイテムを造り続けています。
ごくごくシンプルなAVボード。四隅まで丁寧に仕上げられたボックスに下開きのフラップ扉、中央に仕切りが付けられた造りになっています。
言葉を先に説明しているのでAVボードとして認識できていますが、「箱」の収納がこの高さに収まったからAVボードになった、と言われても納得してしまいそうです。
箱の中に暮らしを入れると公式のホームページで述べられていますが、人が欲しているのはAVボードではなくて、テレビを置くのに丁度いいくらいの「箱」である事が実感できますね。
天板の奥には緩やかな曲線があり、壁付けであってもテレビやレコーダーのコードを逃がせる配線孔の役目を兼ねています。
またウォールナット材の風合いを楽しめる佇まいになっていますが、フラップ扉はガラスに突板を組み合わせた作りになっているので、扉を閉めていてもリモコンの操作がしやすいように配慮されています。
控えめですが実際的な機能。暮らしを邪魔する事なく、純粋に役に立つ。まるでそれこそが暮らしの道具の尊さであると主張しているようです。
巷にはデザインを謳ったものが多く溢れる現代。ですが多く詰め込み過ぎた要素によって暮らしに馴染まなくなってしまう事もままあります。
全てを欲しがるのではなく、必要最低限の機能のみを純粋に求める事。そして使う事で不幸せにならない事。その精神を貫くアイテムは派手さこそないものの不思議な魅力を持つように思います。
家具が「家族の道具」として暮らしの風景に馴染んでゆくことを願っている、そんな広松木工のアイテム。お探しの方はこの機会にいかがでしょうか。