天童木工
ブックチェア 図書館椅子
「椅子の中の椅子」と言えば、ハンス・J・ウェグナーの名作・「ザ・チェア」が有名ですが、私にとっての「椅子の中の椅子」は天童木工の「ブックチェア」です。
飾らないシンプルなデザイン。軽量でありながらも耐久性は十分にある。そして何よりその座り心地の良さが素晴らしいからです。
クッションの無い板座の座面でありながら、ここまで心地よく座れる椅子を私は知りません。
その座り心地の良さは座った瞬間から感じられ、背もたれのフィット感と相俟って、本当に良い座り心地なのです。
本を読む人に、寄り添う椅子。
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デザインを手掛けたのは、日本の家具デザインの創成期を支えたデザイナーの一人である「水之江忠臣」。
作品数の少ない寡作なデザイナーでしたが、それは多くの作品を残すよりも、ひとつひとつの作品に何度も改良を重ねていたからでした。
それ故か、水之江忠臣がデザインした家具は洗練された秀逸なデザインと使いやすさにこだわった名品ばかりです。
今回、ご紹介するブックチェア(図書館椅子)も正に名品と言える椅子です。
1954年に神奈川県立図書館の閲覧用の椅子として製作され、翌年には天童木工のラインナップに加わることになるのですが、その間におよそ100脚以上の試作を繰り返したというから驚きです。
さて、それではチェアを見て行きましょう。
背板と座面には力強く温かみの感じられるオーク材を使用。フレームにはオーク材と打って変わってキメ細やかな杢目のビーチ材を使用しています。
身体に沿うようにゆるく湾曲した背板。座面は前方が少しせり上がり座面の奥に行くにしたがって緩やかに傾斜していきます。
また、座面の先端はせり上がった先からやや下がり、腿裏から膝裏にかけて脚の形に添うように設計されている為、脚への負担も軽減。
背板も直角ではなく、斜めに角度を設けることで背中のラインにフィットします。
木材のみで作られた椅子でありながら、座った際に固さを感じず、身体に沿った設計の為、いつまでも座っていられるような感覚です。
古い昭和の時代にデザインされた椅子は、そのデザインもまた古めかしいのかもしれません。
しかし、無駄のない洗練されたフォルムは美しく、レトロな佇まいが魅力のひとつだと思うのです。
後ろ姿もいいですね。
図書館に為に作られた椅子、本を読む為に作られた椅子は、ページをめくる人の邪魔をしません。
ゆったりし過ぎず、身体に負担のかからない姿勢で座れる椅子ですので、時間をかける読書には最適の椅子です。
男性・女性問わず、本を読む人の姿というはどこか魅力があります。スマートフォン全盛期の時代ではありますが、座り心地のいい椅子でじっくりと読書に耽ってみるのはいかがでしょうか?