天童木工
バタフライスツール
デザインする。
一瞬の欲を満たす為ではなく使われるための美しい形を作る。
ものが溢れ大量生産による大量消費が当たり前となった現代。
美しさの欠けたプロダクトでも大半の人は満たされることを知った社会は使い捨ての傾向を加速させました。
デザインという言葉は本質を大きく損ない、人々は本物を求めなくなったのかもしれません。
それでも魅力的に映るのは情熱と意思をもって生み出されたプロダクトです。
本日ご紹介させて頂くのはデザインに向き合い形作られた名作。
永い命を与えられた美しい一脚です。
生活の為のかたち
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同じ形状の二枚の板。
接合に要するパーツはボルトと真鍮ステーのみ。
それらが生み出す美しいフォルムは今から約60年前に生み出されました。
今回ご紹介させて頂くのはその名の通り蝶の様な美しい造形を持つ名作「バタフライスツール」です。
デザインを手掛けたのは日本を代表する工業デザイナー、柳宗理氏。
安価で質の悪いプロダクトが多く出回っていた戦後の日本でデザインと向き合い多くの名作を生み出した名デザイナーです。
シンプルですべてのパーツが意味を持ち、且つ美しい造形をもって完成される柳氏のデザイン。
バタフライスツールはそんな柳宗理氏を代表するプロダクトです。
柳宗理氏のデザインの特徴は何といっても圧倒的な使い心地。
これは独自のデザイン法によって生み出されています。
紙等で簡単な模型をつくるところから始まり、段々と精度を高め、デザイナー自ら使うことによって使いやすさを確かめ、かたちのバランスを探る。
現代のデザインで多用されているCADや一般的なスケッチでは使い心地をデザイン出来ません。
とてつもなく時間のかかる工程を経て生み出されるデザインだからこそ、時代を超えて愛されるプロダクトが生み出すことが出来たのかもしれません。
バタフライスツールもこの過程を経てたどり着いた形。
美しい見た目を持ちながらもスツールとしての使い心地は抜群です。
そのかたちを実現するのもデザイン。
曲線を持つバタフライスツールを実現することは簡単ではありませんでした。
柳宗理氏はこの形の実現のためプライウッドに注目しました。
イームズ夫妻がデザインした、「レッグ・スプリント」や椅子「LCW」を通じて、プライウッドの存在を認知していたのです。
当時の日本ではほとんど知られていない技術であったプライウッドの開発が東北で進んでいると知った柳宗理氏は仙台にあった産業工芸試験所を訪ねます。
そこで出会った技師の乾三郎と、いち早く成形合板技術を取り入れていた天童木工と共にバタフライスツールは完成したのです。
柳宗理氏は、デザインはデザイナー1人で行うものではなくメーカーや技術者の協力無しには良いものは生まれないという考え方を持っていたそう。
バタフライスツールは多くの協力と天童木工の高い技術があったからこそ実現できたプロダクトでした。
「後から見たフォルムが綺麗でなければならない」
力強い言葉の数々を残した柳宗理らしいこの発言はバタフライスツールにも言えます。
真正面、真横、少し横から、上から。
どの角度からで美しいシルエットは空間に馴染ながらも、心地良いリズムを与えてくれます。
和室や玄関先、オットマンやサイドテーブル等、圧倒的な柔軟性も魅力的です。
見た目の美しさだけでなく、使われるための美しい形。
バタフライスツールは柳宗理のデザイン理念を体現した一脚であることがわかります。
使い捨てという選択が出来るようになった現代の生活。
安価なプロダクトとデザイン性が重要視されたプロダクトの差は更に大きく開いたように思います。
そこにデザインの本来の意は込められているのでしょうか。
デザインの良さは内面から溢れるもの。
それは生活の中にあって初めて輝きます。
そこに「作品の質を長続きさせる」という柳宗理氏の信念が加わることでこのスツールは完成するのではないでしょうか。
長くお使い頂きたい名プロダクト。
ジャパニーズミッドセンチュリーを作り上げた歴史的な一脚のご紹介でした。