倉俣史朗
梅の木

本日は、60年代初期から90年代にかけて世界で活躍し、国際的評価を受けた日本を代表するデザイナー” 倉俣史朗 / Shiro Kuramata “が内装を手掛けた「江戸前寿司 赤坂 梅の木」より『 ダイニングチェア＆カウンターチェア 』のご紹介♪

時を語る

倉俣史朗は1934年東京生まれ、バウハウス思想を継承した日本で最初のデザイン教育機関「桑沢デザイン研究所」でリビングデザインを学び、60年代後半からは当時の最新科学技術に可能性を見出した世界的なデザイナーです。

1965年にはクラマタデザイン事務所を設立。前衛芸術家の高松次郎や横尾忠則らともコラボレーションをしています。1981年にはエットレ・ソットサスの誘いで多国籍からなるデザイナー集団「メンフィス」に参加しています。

同品のお話の前に倉俣作品の有名作を少しお話しますと、比較的手の届く価格帯の物ではインプションでも度々入荷しているデザイン照明「K-Series（通称：オバQ）」が一般的ですね。

また同氏の最高傑作と称される名作椅子『 ミス・ブランチ Miss Blanche 』は、テネシー・ウイリアムズの戯曲「欲望という名の電車」の女主人公ミス・ブランチ・デュボワのバラ模様の衣裳から着想を得て、デザインされたものと伝わっています。

無色透明のアクリル製チェア内部に造花の薔薇が浮遊する様に内包。気泡が入らないように、造花を固定しながら1点1点手作業で製造することもあり、僅か56脚のみ製造され、ニューヨーク近代美術館（MoMA）、サンフランシスコ近代美術館等、名だたる世界の美術館の永久コレクションとして取引。世界最古の国際競売会社「サザビーズ」では、日本円で1000万以上の値が付き、ピーク時には5000万円を超えたことも！？また元サッカー日本代表の中田英寿氏も所有しているそうです。

インプションではいまだミス・ブランチの入荷は無いものの2021年にその小さなオブジェ『 Sealing of Roses 薔薇の封印 』を入荷した事がありました。（既に完売）

2024年にはインプション店舗がある東京・世田谷区でも世田谷美術館にて同氏の大展覧会「倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙」にて、同氏の歴史を辿る様々な名作が紹介され、ミス・ブランチも展示されていました。

展覧会場では家具や照明デザインの点数、またその表現の幅のバリエーションの多さに驚かされましたが、プロダクトデザインの一方で、同氏は飲食店の内装や住居建築等も手掛けていました。

こちらは2024年の1月に惜しまれながらも閉店した「江戸前寿司　赤坂 梅の木」にて店舗什器として使用されていた椅子。同店は1978年に倉俣史朗が手掛け、政財界、芸能界、デザイン業界の大物達が足繫く通った名店で、40年以上に渡り親しまれてきましたが、近年現存する倉俣史朗のインテリアデザインとしても、多くのインテリアファンから愛されていました。

店内の内装や家具には「ミス・ブランチ」の様な派手さは無く、非常に対照的。壁・床・天井・階段・収納・テーブル・チェア等が、其々ブラック＆ホワイトを基調にストレートラインで構成されています。

メリハリのきいた空間デザインながら、家具のフレームには杢目の表情を残す等、自然素材の温もりと質感が感じられます。天井のダウンライトは建築と家具の輪郭を強調し、温かみある光と共にはっきりとした陰影を演出。色を厳選し、エッジを効かせた内装と家具により「素材とカタチ」の美しさが際立つ静かなモノトーン空間。そこで提供される新鮮なお寿司の「色・形・艶」に自然と人の目が集まり、極上の時間を生み出しています。

残念ながら、家具に関して倉俣史朗がデザインしたという記録はありませんが、調べてみても同じデザインの汎用品は発見されず、倉俣がデザインし作らせた物かセレクトした物かは不明。しかしながら、40年以上に渡り、「梅の木」で実際に使用されていた家具を、光栄にもお買取させて頂きました。

中古家具の販売の際には、通常メンテンナス時にペイントロスの修正等行う事がありますが、今回の場合は、流れてきた時間も極めて重要。傷や擦れ、ひとつひとつも歴史の一部と捉え、清掃以外の手入れは敢えて行わず、次の時代、次の所有者様へと継承させて頂きます。

倉俣史朗は、世界の主要な美術館より「20世紀の日本で、最も重要なデザイナー」と紹介され、フランス文化省芸術文化勲章を受章する等、国際的評価も高く、これまでの欧米のデザインは勿論、日本の伝統とも異なる独特な世界観は世界に衝撃を与え、「クラマタ・ショック」という言葉が生まれた程でした。 1991年急性心不全のため56歳の若さで死去し今日まで、年々同氏のデザインの価値が上がっています。同品はご購入者様からの再買取の無い限り、今後確実に登場する事の無い限定数になります。倉俣史朗のファンの方は勿論、チェアコレクターの方にも必見のアイテムです。