vitra
Eames House Bird
経堂に住むカラスは、停まっている自転車のかごから食べ物を漁るようです。
タイミングよくそんな話を耳にしたもので、なんとなくドキッとしました。
なぜなら現在お店にはカラスがいるから。いや、でも果たしてこれはカラスなのでしょうか。
きっと幸運を呼びます
「イームズハウスバード | Eames House Bird」としてvitra(ヴィトラ)社から販売されている黒い鳥。イームズの名前を冠していますが、実は夫妻がデザインしたわけではありません。
オリジナルはアメリカ東部のアパラチア山脈の周辺で作られていた民芸品。2人が旅先で手に入れ、50年以上にわたって自邸で大切に飾っていたものが忠実に再現されています。
ぽってりとしたお腹につぶらな瞳、そして鋭いくちばしとすっきりと伸びる尾。でもなぜか脚だけは爪楊枝を突き刺したみたいに華奢。自立しないように見えるのに、尾を使って3点で支えることで凛とした立ち姿を披露してくれます。
そんな美しい造形が際立つボディとのアンバランス感が作り出す可愛らしさに、きっとイームズも心を射抜かれたのでしょう。
ただやっぱり民芸品と聞くと、魔除けだとか幸運を呼ぶだとか何か意味があるんじゃないかと思ってしまうわけです。
そこで調べてみたのですが残念ながら詳細は分からず。夫妻が鳥のオブジェを持ち帰ったのは1900年代前半だといわれていますが、現在は同様の民芸品は作られていないのかもしれません。
では一体この黒い鳥の正体はなんでしょうか。アメリカに生息する黒い鳥の代表格は2種。ひとつはキタオナガクロムクドリモドキ、そしてもうひとつがアメリカガラスです。
前者は南部、後者は北アメリカに広く分布しているそうで、生息地をみるとやっぱりモチーフはカラスで間違いなさそうです。
一般的に嫌われ者のイメージがあるカラスですが、その一方で神の使者として神話や伝説に登場したり、英国王室の守護神とされていたりと正の面も持ち合わせます。
たしかに日本でも八咫烏は導きの神。勝負運や開運のお守りとして用いられ、サッカー日本代表のエンブレムにも採用される縁起の良い鳥です。
イームズ夫妻のデザインにも多大なインスピレーションを与えたとされるだけあって、幸せの黒い鳥だと思えてならないのです。