Louis Poulsen
PH4/3
照明は空間をより魅力的に映し出す重要な役割を担っています。
形状のみがデザイン的でも放たれる灯が美しくなければ照明デザインとは言えません。
本物のデザインは実際の広さ以上の奥行きを与え、環境すら変えてしまう力を持っています。
本日紹介させて頂くのは、ただ暗い場所を照らすだけでは無く、デザインされた美しい灯を持った名照明です。
美しい光の在り方
北欧を代表する照明器具メーカー、ルイスポールセン。
数多くの名照明を世に輩出し、今日まで様々な場所を照らし続けてきました。
「形態は機能に従う」というスカンジナビア・デザインの伝統に基づく丁寧なものづくりを実践しているブランドです。
この照明のデザインを手掛けたのは近代照明の父、ポール・ヘニングセン。
生涯において200種類以上の照明をデザインしたことで知られる名デザイナーです。
PHシリーズは数多くの作品の中でも照明の傑作として知られる名作。
美しいデザインから放たれる美しい灯はこれまでの照明の概念を打ち崩し、更なる可能性を知らしめました。
光がどう出るかを計算し、その後に形状を設計する。
ポール・ヘニングセンの照明デザインは、照明自体の形状ではなく、放たれる光の特性に基づいています。
重要なのは光に伴うノイズ、いわゆるグレア(光源)を考慮することでした。
この部分が隠されるデザインは洗練された光を求めるためのもの。
極めて柔らかな光は、深い思索と計算の積み重ねによって生み出された結果です。
今回入荷したのは不朽の名作として1966年の発表以来製造を続けているPH4/3。
同シリーズはポール・ヘニングセンが最後に手がけたシリーズと言われ、同社の名プロダクト PH5 より一回り小さいサイズ感になります。
PH4/3は3枚のシェードが描く曲線に対数螺旋を取り入れたクラシックなPHランプの金属製バージョンです。
PHランプの名称に含まれる数字は、分数ではなくメインシェードのサイズとその組み合わせを示したものだそう。
メタルシェードはソケット部分の放熱孔を除いて上部からの光は放射されず、テーブル面などの下部に光を集中させます。
ボトムシェードの内側には、不快な眩しさを防ぐためのカバープレートを設置。
光が必要な方向に効率的に導くためのシェードの形状と、光源のまぶしさを軽減するという二つの課題を、ヘニングセンは晩年まで追求し続けました。
放たれる美しい灯は、従来の照明の概念を覆し、新たな可能性を示しました。
ポール・ヘニングセンが追求したのは、照らされる人々や物、さらには空間を理想的に演出するための質の高い光の在り方でした。
照明をデザインするという事は同時に灯をデザインするということ。
近代照明の父が手掛ける名作のご紹介でした。