METROCS
F031 Desk
音楽でも美術でも、時として同じ人が作ったとは思えない作品に出会うことがあります。
例えばピカソの動物のドローイングなんて、ピカソ感のない可愛らしいキャラクターのような線描に驚いたものです。
良い意味で期待を裏切る「ぽくない」作品たち。でもその変化やギャップもまた魅力的に映るものです。
直線から始めましょう
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もちろんそれは家具デザインにも当てはまります。Pierre Paulin(ピエール・ポラン)といえば、独創的で流麗な作品を生み出したフランスを代表するデザイナー。
リボンチェアにタンチェア、オレンジスライスにマッシュルーム、パンプキンなど有機的なフォルムの作品の数々が思い浮かびます。
もともと「椅子に脚は必要か」といった斬新な発想の持ち主だった氏。それでも数々の名作が誕生する以前のデザインは機能性に重きが置かれていました。
その代表作こそが、Thonet(トーネット)社から1956年に販売された「CM141」。現在はMETROCS(メトロクス)が正規復刻の「F031」として製造・販売するパーソナルデスクです。
革新的とは程遠いながらも、直線を基調としたすっきりとした佇まい。そして異素材を組み合わせることで単調になりすぎない絶妙なデザインバランス。
実は、ポラン自身がメーカーにデザインを持ち込み製品化させた最初で最後のプロダクトだそうです。それだけ自信作だったのでしょう。
個人で使うためのデスクだったことから本国では「プチビューロ(小さな机)」と呼ばれたようですが、全く窮屈さは感じられません。
130cm幅の天板は広々、深さの異なる2杯の抽斗はA3が余裕で収まるサイズ。コンパクトであることを忘れてしまうほど申し分のない使い心地を実感頂けるはずです。
ポランがはじめに影響を受けたのは、きっと彫刻家だった大叔父や自動車デザイナーだった叔父といった肉親たちだったに違いありません。
だからこそ細部のディティールにまでこだわったミニマムなこのデスクが生まれ、初期の名作として、さらにはフレンチモダンの定番として現代でも愛され続けています。
環境が変われば考え方も変わる。考え方が変われば好みも変わる。そして、好みが変われば作るものも変わる。
その後、1960年代以降には同時期に活躍したイームズやサーリネンなどアメリカンミッドセンチュリーの巨匠たちに刺激を受けたデザインを次々と体現していきます(それが上に挙げた代表作たちです)。
ポランが辿り着いた曲線デザインの根源にある直線デザイン。はじまりの直線が作り出す快適なワークスペースが、普段なら閃くことのない斬新な“ぽくない”アイデアをもたらしてくれるかもしれません。