Marc Newson
Orgone chair
タンス・食器棚等の箱モノ家具やテーブルに比べデザインに幅のある『椅子』。
巨匠フィンユールの作品は、『まるで「彫刻」のよう』と形容されることが多くありますが、この椅子も『使う家具』としての役割を越えた魅力を持った存在です。
アートとしての1脚
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国内インテリアブランドIDEEでデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた後、イッタラ、アップル、ルイ・ヴィトン、モンブラン、エルメス、ナイキ、フロス等多くの企業で実績を残したデザイナー” Marc Newson(マーク・ニューソン)”。
同氏が手掛けたプロダクトはジャンルも様々で、テーブルウェア、時計、カメラ、ジュエルに家具、アート作品等ジャンルも多岐に渡り、身近なところでは『味の素』の容器や、アップルウォッチ等もその一つ。
TIME紙の2005年度「世界で最も重要な100人」に選出されるなど現代のプロダクトデザインを語る上で避けられない人物の1人です。
ニューソンがIDEE時代に手掛けたオンブルチェアやウィッカ―チェアのデザインを汲むこちらの『オルゴンチェア』は、流れるような曲線を多く用いたTHE・スペースエイジデザイン。
最大の特長は一体成型の背座が筒状であることでしょう。
この部分は質の高い造形技術や仕上げを覆い隠してしまうのがとてももったいない、という思いから無意識に残すようになったそうです。
結果として直線的な切り口は丸みを帯びたフォルムに少しの緊張感を加え美しさを引き立てると共に、陰影を生み出し見る角度によって違った表情を見せてくれる魅力の一つとなりました。
さて、この開口部・・・デザインとしても秀逸ですが勿体ないので何か使い道は無いものかと考えたところ、マガジンラックやブランケットの収納にしてあげるのが良さそう。
上から平面で見ると砂時計のような形に・・・。
アンバランスな3本脚がユニークなデザインに拍車をかけております。
オルゴンチェアはもともと1993年にアルミニウム素材のものとして発表されていましたが、1998年にポリプロピレンで新たに製造され成形にはカルティエ財団とのプロジェクトで使われた回転成形という手法が用いられております。
このプロジェクトというのは、カルティエの展覧会のために制作したジェット機『Kelvin40』のこと。
航空機のデザインまで手掛けるとは、仕事の幅広さに改めて驚かされます。
背座は中央に向かってやや窪んでおり、身体を優しくホールド。
ポリプロピレン製ゆえに適度にしなり、思ったよりも気持ちの良い座り心地となっております。
椅子としては勿論でございますが、それ以上に空間を彩るアートピースとしてそこに置きたくなる1脚です。
メビウス輪のように裏と表の境界を持たない、なんともミステリアスなデザイン。
ブラックはよく見かけますが、ブルーは流通量の少ない希少な個体です。
見て、座って楽しめる90年代の名品のご紹介でした。