Fritz Hansen
3316
ミッドセンチュリーモダンデザイン全盛期。
新素材の登場と戦争の終焉、デザイナーの軽やかな発想は数多くの名作に形を変えました。
特にチェアデザインはその可能性を広げ、より人に寄り添うデザインを与えられることになります。
人々に衝撃を与えたアイコニックなチェアは当時“アクセントチェア”とも呼ばれていたそう。
その代表的な存在でもある名チェア“3316”のご紹介です。
新しい空間
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北欧デザイン界の巨匠アルネ・ヤコブセンが手掛けた不朽の名作、通称エッグチェア。
発表は1958年。
自身が設計したデンマーク・コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのロビーの為にデザインしたのがこのチェアでした。
その名の通り卵を彷彿とさせるハイバックのフォルムが印象的。
これまでのチェアデザインには無い存在感はまるで彫刻やオブジェのよう。
あまりにも衝撃的なルックスは人々を驚かせ、それに伴う圧倒的な包容力もまた衝撃的だったようです。
ヤコブセンはSASロイヤルホテルの設計のみならず内装のすべてを手掛けています。
完璧主義でも知られヤコブセン。
エッグチェアがオブジェの様に配置されたロビーの景色はあまりにも美しく、空間自体が作品の様だったと評価されています。
工学技術でさまざまな偉業を成し遂げたことでも知られるヤコブセン。
世界で初めて実現された背と座を一体にした構造を持つアントチェアの様に、これまでに無かった形を確固たるデザイン哲学のもと叶えています。
そしてそれらは果てしない試行錯誤の最終点でもありました。
エッグチェアも同様、完成までに様々な苦難を乗り越えたチェア。
最終的に強度の高い発泡体で椅子を成形するという他に無い発想でエッグチェアは完成しました。
これにより生まれた見た目の美しさと軽量性、堅牢性と包容力の実現は今尚色褪せない名作として魅力を放つことになります。
包み込むような形状は見た目のインパクトや座り心地だけでなく、座る人の空間にまで影響を与えます。
公共スペースであるロビーの中にプライベートな空間を作り上げたのです。
この感覚は後のチェアデザインに大きな影響を与えることに。
これまでのチェアには無い感覚的な箇所を補い、ヤコブセンはこのチェアデザインを持ってチェアデザインの向こう側へと到達しました。
深く柔らかな感覚は程よい硬さのクッションとリクライニング機能によるもの。
下部のレバーでリクライニングの硬さ調整を行えます。
身体を預けた際のテンション感が心地よく、椅子とは思えない心地を生みます。
左右対象や連続を得意とした完璧主義で知られるアルネ・ヤコブセン。
彼は理想の形と実用性を完成させるために幾度もの試行錯誤を重ねていたというのはその他のプロダクトにも逸話として残っています。
デザイン性は勿論、必要なのは使い心地。
「美しいものを作るのではなく、必要とされているものを作る」と残した通り、どの面からみても妥協のないデザインはまさに完璧。
故に揺ぎ無い拘りを叶える為の計り知れない程の努力がヤコブセンの手掛けたすべてに宿っています。
ヤコブセンが努力と才能を持って開拓した新しい空間。
それまでの常識を覆した歴史的名デザインは、今日でも新鮮な魅力を放ちます。
巨匠の偉業を象徴する名プロダクトのご紹介でした。