Fritz Hansen
ANT CHAIR
黒くぬれ!
原題「Paint it, black」はローリングストーンズの名曲。
気に入らないドアの赤色を黒に塗りつぶせという詩の内容は多くの若者に衝撃を与えました。
衝動を行動に移すことは難しく、制約や監視に縛られた我々にも、何かを塗り替えることはかなりの勇気が必要。
塗りつぶしたその後をイメージする能力も必要です。
本日紹介させて頂くのはデンマーク、コペンハーゲンが生んだ名デザイナーの代表的名作。
コペンハーゲンで育った彼は幼少期、自身の寝室のビクトリア調の壁紙を塗りつぶしたそう。
幼雑ないたずら書きをするのではなく、部屋の壁全てを真っ白に。
当時はまだ白い壁は一般的ではありませんでした。
これ以上無い美しさとデザイナーの強い意思が生んだ名作のご紹介です。
完璧なデザインと確固たる自信
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本日紹介させて頂くのは歴史的名作として名高いチェア「ANT」。
“アントチェア”、“アリンコチェア”と呼ばれ親しまれる名チェアです。
デザイナーは20世紀でもっとも影響力の大きい建築家でありデザイナーとして知られるアルネ・ヤコブセン。
クリエーターとしての視点とユーザーとしての視点、その両方を持ち合わせた独自の感性で多くの名作を生んだデザイナーとして知られています。
左右対象や連続を得意とした完璧主義でも知られるアルネ・ヤコブセン。
彼は理想の形と実用性を完成させるために幾度もの試行錯誤を重ねていたというのは様々なプロダクトに逸話として残っています。
デザイン性は勿論、必要なのは使い心地。
「美しいものを作るのではなく、必要とされているものを作る」と残した通り、どの面からみても妥協のないデザインはまさに完璧。
故に揺ぎ無い拘りを叶える為の計り知れない程の努力がヤコブセンの手掛けたすべてに宿っています。
アントチェアもそのひとつでした。
背と座を一体化させたその構造の製作は、最初からスムーズに進んだわけではありません。
当時の最新技術成形合板。
ヤコブセンが手掛けた最初の成形合板を用いた製品がアントチェアでした。
試作の段階では背と座の境部分にヒビが生じ製品化は難航。
試行錯誤を繰り返すうちにある場所が削り取られることになります。
ヒビや歪み等のダメージが生じた部分。
その箇所を左右から取り除きながら精度を高めていったそう。
そして完成されたチェアはくびれのある蟻のような姿を持っていました。
このくびれはまさにヤコブセンの試行錯誤と努力の結晶でした。
くびれが叶えたのは椅子としての強度やデザイン性だけではなく、程よいしなりや身体の形状や動きに適応する柔軟性。
圧倒的なデザイン性を持ちつつも軽量且つスタッキングできる点。
これもまた計算と努力を尽くしたヤコブセンだからこそ実現できたポイントです。
その独特のフォルムから当時、先進的すぎるとされたアントチェア。
製造元のフリッツハンセン社でも懐疑的な声が上がったそう。
このような状況で如何にアントチェアが世に放たれたか。
これはヤコブセンの強い意思と勇気が大きく関わっています。
生産を継続させるためにヤコブセン自身が売れ残ったすべてのチェアを買い取ることを約束したのです。
売れ残るとかなりの数、そして金額になったはず。
幼少期からの強い意志は20世紀を代表する名作を残す為の大いなる手助けをしました。
絶対的な自信にみなぎっていたのでしょう。
デザイン性と実用性の融合は、公共の場でも活躍し長年のロングセラーとなりました。
世界で初めて実現された背と座を一体にした構造。
流れるような曲面。
ユニークさすら感じさせるフォルム。
成形合板の最大の魅力である薄さを最大限にまで引き出した爽快さ。
それを支えるレッグは華奢に広がり軽快な印象を与えてくれます。
座り心地に込められたデザイン。
歴史的名作とされる所以は全ての箇所に宿ります。