ファントムハンズ PHANTOM HANDS PH59 アームレス ラウンジチェア カンガルーチェア チーク材 ラタン チャンディーガル ピエール・ジャンヌレ ~ 受け継ぐ、ジャンヌレの思想

UPDATE: STAFF:ミズ
ファントムハンズ PHANTOM HANDS PH59 アームレス ラウンジチェア カンガルーチェア チーク材 ラタン チャンディーガル ピエール・ジャンヌレ ~ 受け継ぐ、ジャンヌレの思想

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Pierre Jeanneret × PHANTOM HANDS
「PH59」kangaroo Chair

「ピエール・ジャンヌレ」「チャンディーガル家具」。

現在では、世界中の美術館がコレクションするほか、名だたるオークションハウスでも高額で取引されるチャンディーガル家具。しかし、その評価が確立されたのは、実はごく近年のことです。

かつてチャンディーガルの公共施設で使われていた家具は、長い年月のなかで少しずつ老朽化し、1990年代以降には「古い家具」として扱われるようになります。

やがて多くの家具がスクラップ置き場や街の片隅へと追いやられ、なかにはそのまま廃棄されるものもありました。

都市そのものの歴史を語る重要な家具でありながら、その価値は長いあいだ顧みられることがなかったのです。

そんなチャンディーガル家具に、再び光が当たり始めたのが2000年代以降。

海外のコレクターやデザイナーたちが、その造形美と独特の存在感に目を留め、少しずつ世界へと紹介されていきます。

そして2013年、インド・バンガロールを拠点に、チャンディーガル家具のデザインを現代へと受け継ぐ新たな動きが始まります。

受け継ぐ、ジャンヌレの思想

その役割を担ったのが、インド各地から木工、木材研磨、籐編み、椅子張り、仕立てなど、それぞれの分野で卓越した技術を持つ職人たちが集う「Phantom Hands(ファントム・ハンズ)」です。

彼らが手がけるのは、ピエール・ジャンヌレが生み出したチャンディーガル家具の復刻。

ジャンヌレの遺族へのコンタクトや法的な手続きを経て、当時のチーク古材を再利用し、現存するオリジナル図面をもとに、細部まで忠実に家具を蘇らせました。

現在では、世界各地でジャンヌレのリプロダクトが生産されています。

そのなかでもPhantom Handsが特筆されるのは、単なる工業製品としての復刻ではなく、当時のインドに根付いていた手仕事を受け継ぎ、熟練した職人の手によって一脚ずつ丁寧につくられていること。

素材の選定から加工、籐の編み込みに至るまで、随所に職人の技術が息づいています。

そして今回入荷したのが、ピエール・ジャンヌレを代表する名作のひとつ、「カンガルーチェア」です。

その名の通り、カンガルーを思わせるように前脚を持ち上げた特徴的なシルエット。ジャンヌレの家具のなかでも、とりわけアイコニックな存在として知られる一脚です。

力強い構造美を持ちながら、どこか愛嬌を感じさせる佇まいも、この椅子の魅力。

1950年代半ばにデザインされたカンガルーチェアは、チャンディーガルにある総合病院のホール用として製作されたほか、個人邸にも納入されていました。

合理的な構造のなかに、チーク材の豊かな表情と、ラタンによる繊細な手仕事が共存する。

力強さと軽やかさをあわせ持つその佇まいは、チャンディーガル家具ならではの魅力です。

一見するとシンプルな構造でありながら、素材の選び方やディテールには、ジャンヌレが追求した機能性と美しさが凝縮されています。

そして、そのデザインを支えているのが、インドの素材と職人たちによる確かな手仕事。

建築のためにつくられた新しい都市に、家具という小さなスケールで息づいたモダニズム。その魅力を、カンガルーチェアは端的に物語っています。

木材には、ジャンヌレのオリジナルデザインに倣い、ミャンマー産のチーク材を使用。

“本チーク”とも呼ばれる希少なチークの新材に加え、築100年以上の建物に使われていた古材も丁寧に製材し、家具へと生まれ変わらせています。

かつてインドで広く流通していたチークの多くがミャンマー産だったことを考えれば、その素材選びにも、当時の家具づくりへとつながる背景が感じられます。

製作は、現存するオリジナル図面をもとに、一つひとつ職人の手で。

図面に忠実でありながら、木材それぞれが持つ表情を生かして仕上げられることで、一脚ごとにわずかな個性が生まれます。

そして、カンガルーチェアを印象づけるもうひとつの要素が、座面や背もたれに用いられた籐編みです。

機械で編まれたシートを張り込むのではなく、アッサム地方の籐を職人が一本ずつ手作業で裂き、椅子そのものに直接編み込んでいきます。

素材の状態を確かめながら、一編みずつ進められるその工程には、工業製品にはない揺らぎと、手仕事ならではの温度があります。

厳選された素材と、熟練した職人の技術。

目に見えるデザインだけでなく、こうした見えない工程の積み重ねこそが、Phantom Handsの家具に宿る質感をつくっているのです。

Phantom Handsがつくる家具は、ジャンヌレのデザインをただ忠実に再現したものではありません。

今回入荷した「カンガルーチェア」を見てもわかるように、そこにはオリジナルへの深い敬意と、インドに根付く手仕事の文化が息づいています。

素材を選び、図面を読み解き、職人の手で一つひとつ仕上げる。

それは、過去をそのまま保存することではなく、その価値を未来へと受け渡していくためのものづくりです。

オリジナルへのリスペクトと、それらを残していくための努力。

一脚の椅子を通して、過去と現在、そしてこれからの時間がつながっていく。

長く愛される家具には、時代を超えて残るだけの確かな理由がある。

カンガルーチェアは、そんな「受け継ぐこと」の美しさを、静かに感じさせてくれる一脚です。


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