Herman Miller
DCW
ミッドセンチュリー期を代表する名デザイナー、チャールズ&レイ・イームズ夫妻。
数多くの名プロダクトを生み出した彼らのデザインは一夜にしてできるものではなく、時間をかけてはぐくまれるものでした。
イームズ夫妻の作品は時に本来の用途を超え、美しい作品のような佇まいを見せます。
本日ご紹介させていただくのはそんな二人の代表作。
ミッドセンチュリー期の普遍の象徴ともいえる名チェアをご紹介させていただきます。
終わりなき旅の途中、ふたりが残した歴史的名作
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「デザインはより良い世界をつくるためにある。」
軽やかなデザイン哲学を持ち、機能性や合理性を備えたデザインを追求したイームズ夫妻。
使う側の身に寄り添いデザインを完成させるスタイルは多くの名プロダクトを生み出しました。
その一つが今回ご紹介させて頂く名作、プライウッドダイニングチェア/DCWです。
既成概念に捉われない独自のデザイン哲学を掲げた2人。
当時一般では無かった素材を家具に用い、新たなプロダクトデザインを手掛けたのも彼らでした。
プライウッドで構成されたこのダイニングチェアもそのひとつ。
木製の家具が主流だった当時、成型合板(プライウッド)を家具の素材として使用するという事は一般的ではありませんでした。
彼らはプライウッドを用いてチェアを完成させようとしました。
建築資材として認知されていたプライウッドの自由度とコスト、大量生産性は彼らにとって重要な可能性でした。
幾度もの実験を重ね成型合板を椅子の形に近づける。
デザイン性だけでなく椅子としての機能性の両方を求めるチェアを作るという事は簡単ではありませんでした。
合板を曲げると割れてしまう。
人が座れるほどの強度が無い。
前人未到の発想を叶える道は険しく困難。
夫妻が様々な木材成型の技法を試すなか、アメリカ海軍からプライウッドを使った添え木や担架などの開発の依頼が舞い込みます。
過酷な環境でも耐えられる強度を叶えたそれらの製品は第二次世界大戦で活用されることになったのです。
第二次世界大戦終戦後。
夫妻は海軍のために考案した熱と圧力を加えて木材を成型する技法を家具に応用しようとしました。
軍用プライウッド製作のノウハウを活かし何年もかけて行ったプライウッド成型の実験の末に、ようやく最終工程が完成。
そうしてようやく夫妻のイメージの中にあったプライウッド製の椅子が完成したのです。
苦難の末に手に入れた3次元カーブの合板の圧倒的な座り心地と無駄のないすっきりした外観は当時のプロダクトデザイン界に衝撃を与えることになります。
軽量でありながらも複合的な曲線を描く美しいプライウッドチェア。
クッションがなくとも快適な座り心地で量産が可能なチェアは驚くべき発明でした。
この発明は後の家具デザインと製造に大きな変化をもたらすことに。
夫妻自身もこれをきっかけに名作シェルチェアを閃いたといわれています。
普及の名作と呼ばれる夫妻のデザイン。
アメリカのTIME誌はDCWを”20世紀最高のデザイン”に選出しました。
「優雅で、軽やかで、快適」と評価されたこのチェアは今日のプロダクトデザイン界にも影響を与え続けています。
柔軟性の無い素材にソフトなルックスと心地を与えたイームズ夫妻。
ひとくくりには出来ないデザインの楽しさと素晴らしさを思い知らされます。