Herman Miller
DCM
まだ暑いのはホントに確かなのですが、9月という暦に突入し電車の改札に学生やサラリーマンの方々のお戻りを見て、スンと秋の感触を得た今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。
頭の中をある意味強制的に切り替えるタイミング、欲しかった憧れの1脚を見定めてみるのもありかも知れません。
今回のご紹介は、それにふさわしい1脚です。
ある意味暴力的なブラックホール

今回のご紹介は、皆様ご存知レイとチャールズのイームズ夫妻によるデザインのチェア。
アメリカを、そしてデザインの黄金期とも言えるミッドセンチュリーモダンを牽引した二人のデザイナーは、自分たちが必要な形を作る事を、新しい技術を取り入れる事によって可能にするある意味エンジニアとしての才能を持ち合わせていました。

イームズのビンテージとして人気の高いシェルチェアに関しても、レドームと呼ばれる軍の飛行機がレーダーなどの観測機器を収める場所に用いられていた素材FRPを家具に取り入れる事を考え実現したもの。
今回の椅子はどうでしょうか。



今では当たり前のように用いられるプライウッド(成型合板)。薄くスライスした木材(ベニア)を接着して貼り合わせる事で生まれるこの素材は、3次元的な成型のし易さ、そして無垢材に比べ軽量であるというメリットをもっていました。
戦時中、負傷をした兵士が脚部を固定するためにレイとチャールズは海軍から依頼を受け成型合板による添え木(レッグスプリント)を開発しそのための会社まで立ち上げています。
その会社は海軍の支払いが滞ったためエヴァンスという会社に売却される事になりましたが、そのノウハウはしっかりと二人の中に刻み込まれたことでしょう。

1945年にはそのエヴァンス社による製造で、脚部までプライウッドで作られた椅子「LCW・DCW」を、そして翌1946年にはフレームをスチールにした「LCM・DCM」が開発されます。
それは皆様ご存知の通り人気を博し、現在でも製造が続けられる名作シリーズとして知られるようになっているのです。


特徴的なのは、やはりそのシート。背もたれと座面という二つのパーツはもともとが平面であったとは思えない曲面を描いています。
単純に強度のみを考える脚部ならまだしも、木目の表情を出しながらこれを無垢材で作ろうとするといったいどれほどの労力がかかるのでしょうか・・・。


その曲面のおかげもあり、腰かけた時、そして眺める時の視線すら吸い込んでしまうブラックホールは高いフィット感を生み出します。
個人的な感覚にはなりますが、深く掛けた時に腰の後ろ側の骨(おそらく腸骨と呼ばれるもの)までしっかりと支えてくれる。これによって背筋は伸び、膝裏近辺は自然に持ち上がる。

長く座っているとふとももあたりがしんどくなってくるものですが、急な傾斜のように見えて理想的な姿勢で長く座れるよう、工夫が凝らされている事を感じられます。



心地良いしなりを生む、ゴム製のショックマウント。それを繋ぐフレームは直径1.5センチのしっかりとしたもの。
アッシュ材は木材の中では白味の強い種類ですが、経年によって程よい色合いに。
新しいものがちょっと気恥ずかしい、なんて方でも気軽に取り入れられる良い塩梅になっていると思います。

そして何より、美しい。全てに意味が詰められているように感じられる説得力のある美しさは、デザインの力を身近に感じるのにふさわしい魅力を持っています。
多くの人がこの椅子に感銘を受け、そして使い継がれてきた。その魅力を受け取るのは、今このブログをご覧のあなたなのかも知れません。











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