Knoll
Tulip Chair
お気に入りの映画に『コロンバス』という作品があります。
モダニズム建築の宝庫とされるインディアナ州・コロンバスを舞台としたヒューマンドラマ。
主人公ではなく、あくまで建築物をメインとしているように撮影した映像がとても美しい映画です。
個人的には、家具や建築物に興味を持つきっかけとなった作品のひとつです。
本日ご紹介いたしますアイテムは、こちらの映画に幾度も登場するデザイナーによって手掛けられたミッドセンチュリーを代表するプロダクト。是非最後までお付き合いくださいませ。
チェアも空間も美しく
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Knoll(ノル)社は1938年にハンス・ノルによって、創業されたファニチャーブランド。
ミース・ファン・デル・ローエやジョージ・ナカシマ、イサム・ノグチなど数多くの著名なデザイナーとのプロダクトを世に送り出してきました。今日ではハーマンミラー社と共に、アメリカのミッドセンチュリーモダンを代表する存在となっています。

デザインを手掛けたの20世紀を代表するフィンランド人デザイナー・建築家、Eero Saarinen(エーロ・サーリネン)。
父である建築家のエリエル・サーリネン、親友のチャールズ・イームズとの交流など、建築や家具について学ぶには、申し分ないほど恵まれた環境の中で多くの影響を受けてきました。
ちなみにエーロ氏の代表作には今回の『チューリップチェア』の他、『ゲートウェイアーチ』、ジョン・F・ケネディ国際空港の『TWAターミナル』などがあります。

チューリップチェアが誕生したのは1956年。
チェアと同じくエーロ氏を代表するプロダクトである『チューリップテーブル』と共に、ペデスタルファニチャーシリーズの一つとして生まれました。
このシリーズが生まれた背景には、椅子の脚が多すぎるという問題がありました。
テーブルの脚で既に4本、さらに椅子の脚が4本×4=20本、テーブルと椅子を合わせて計24本。確かに計算すると脚があまりに多いことが分かります。そんな状態を同氏は「スラム」と表現するほどに問題意識していました。

スラッと伸びた一本の脚と美しい曲線を描くシェルによって構成されたフォルムはスペースエイジな雰囲気。
脚の本数を減らすという問題の解決と美しい造形のどちらも実現しました。
家具に対しての深い哲学と多大な研究を重ねたエーロ氏だからこそ出来たデザインです。

赤い座面クッションの組み合わせが多いイメージのチューリップチェアですが、今回のチェアの座面と背もたれには、落ち着いた雰囲気の深いグリーンをベースとしたファブリックを使用しています。
また、こちらはファブリックがシェルまで張り込まれたタイプ、シェルの露出が少ない分、より柔らかな印象を与えてくれます。また、現行にはない仕様なのでビンテージの証にもなります。

アームがあるので包み込まれるような座り心地が味わえるチェア。
身体の接する面にはやや固めのクッションが使用されており、長時間着座した際の疲れを軽減してくれます。
座面が回転式な点も何気に嬉しい仕様です。

プロダクトも空間も美しくありたいという、エーロ・サーリネンの哲学から生まれた逸品です。
シンプルかつミニマルでありながら、存在感を放つフォルムはやはり名作。
置いておくだけでも絵になるので、オブジェとしてもお楽しみいただけます。
60年程前に誕生したプロダクトですが、その美しさはこれからの60年も人々を魅了してくれそうです。
