Knoll
Tulip chair
戦争の終焉や新素材の開発、異文化の流入により大きな変動が起きたミッドセンチュリー期のアメリカ。
家具などのプロダクトデザインにも大きな影響をもたらし数々の名作が生まれました。
軽やかで今までにないデザインはそのフォルムに反し様々な困難を乗り越えた努力と研究の結晶でもあります。
本日はミッドセンチュリーを代表する名作、チューリップチェアを紹介させて頂きます。
デザイン的融合
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滑らかなフォルムのシェルから延びる一本の脚。
脚部は地面に向かい柔らかく広がり、まるで重力に負けて溶け出している様。
この印象的で優雅なデザインのチェアを手掛けたのは、建築家でありプロダクトデザイナーである、巨匠エーロ・サーリネン。
床から伸びる脚と、花弁のような見事な曲線が一輪の花に見える事からチューリップチェアと名付けられました。

同じくミッドセンチュリー期の名作として知られるイームズのアームシェルチェアを彷彿させるフォルムをもつチューリップチェア。
これは偶然ではなく彼のデザインに大きな影響を与えた出会いにあります。
フィンランドのキルッコヌンミ出身の彼はクランブルック美術アカデミーの教授でもある父親の助手を務めていました。
そこで出会ったのがチャールズ・イームズだったのです。

1940年、共鳴した彼らは共にチェアを製作することに。
これがMoMAのコンペティションで最優秀賞に輝いた、名作「オーガニックチェア」です。
その後チャールズとエーロは共同でデザインを手掛けることもありましたが別々の道を進むことに。
その道こそがニューヨークのKnoll社とミシガンのHerman Miller社でした。
シェルチェアを彷彿させる点は、チャールズと共作した「オーガニックチェア」がベースとなっている為だったのです。

「快適にくつろげる椅子」を追求したサーリネン。
フォルムの美しさに隠れる実用面での美しさは新素材に異素材を組み合わせることで実現しています。
シェル部分はプラスティック(FRP)、脚部は強度的問題を考慮しアルミダイキャストを使用。
異なる素材を使用しながらデザイン的融合に成功した名作としても知られており、それまでの椅子の概念を覆す発明でもありました。

一本脚で自立するデザイン。
椅子の概念を覆す発明はここにあります。
世界初の試みと言われる一本脚は従来の椅子やテーブルの脚によるテーブル下の混乱状態を解決する為だったのです。
サーリネンはこの脚の研究に5年という歳月を費やしたそう。
彼はこの研究により、家具周辺の空間をもデザインして見せました。

オブジェのようなフォルムからスペースエイジチェアの代表格としても知られるるチューリップチェア。
スクリーンにも度々登場していることもありその印象が強いチェアですが、意外にも様々なテイストにも馴染みが良かったりします。
その馴染みの良さこそ、サーリネンが研究に費やした年月と実用性を叶えた上でのデザインの素晴らしさの賜物なのかもしれません。
ミッドセンチュリーモダンファニチャーを語る上では外せない名作のご紹介でした。
