ノル Knoll エーロ・サーリネン Eero Saarinen エグゼクティヴ #72 サイドチェア FRPシェル PVCシート メタルベース 50-60's ビンテージ ~その裏側に何を見る~

UPDATE: STAFF:トリス
ノル Knoll エーロ・サーリネン Eero Saarinen エグゼクティヴ #72 サイドチェア FRPシェル PVCシート メタルベース 50-60's ビンテージ ~その裏側に何を見る~

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Knoll

#72 Side Chair

何度も申し上げている事で大変恐縮なのですが、それでも思ってしまう「乾燥がすごい」。朝起きた時の喉、暖房の効いた室内では鼻の粘膜周り。手を洗う時にはあかぎれ等も気にしなければいけない季節です。

湿度が欲しい・・・。ひと手間で正直面倒くさい所ではございますが、これを怠ると折角の年末休みも強制寝正月になってしまいます・・・。皆様もどうぞお気をつけくださいませ。

 

インテリアでは、水そのものを素材としているアイテムはまずまずありませんが、「湿度感」を伝えてくれるアイテムはいろいろとあったりします。

今回ご紹介のアイテムは、果たしてどんな質感を伝えてくれるのでしょうか。

 

水を湛え(たたえ)、宙(そら)へ伸びる

今回のご紹介はアメリカのビンテージ。

多種多様様々な好みが存在する現代ですが、「美しく、使いやすい」という機能性を土台としたモダンデザインは多くの人にマッチするもの。

そのモダンデザインが世界に広がっていく中で大きな役割を担ったのが今回のアメリカ。

アメリカで活躍したデザイナーをパッと挙げれば、ご存知レイとチャールズのイームズ夫妻、ハリー・ベルトイア、マルセル・ブロイヤー、イサム・ノグチ、ジョージ・ナカジマ・・・etc。移民を受け入れ、多くの人種と価値観が混ざり合うこの国では、成果主義の名のもとに凄まじいまでのエネルギーが渦巻いていました。

インテリアにおいては不動の人気を誇る北欧諸国の、デザイン最盛期とも言える1940~1970年頃の「ミッドセンチュリー」。対抗する勢いをもっていたアメリカからは、やはり多くの名品が生まれていたのです。

その中でも多くのアメリカ人に深い印象を与えているのが今回のチェアをデザインしたエーロ・サーリネン。

父親はエリエル・サーリネン。フィンランド生まれの建築家であったエリエルは、アメリカにおけるモダンデザインの教育機関、クランブルックアカデミーの学長を務めています。

アーツアンドクラフツやバウハウスといったモダンデザインの潮流を受け継ぐ教育機関であったクランブルックアカデミー。息子のエーロはともに学ぶ同士としてイームズと意気投合し、1940年成型合板による椅子オーガニックチェアを発表しています。

のちにイームズ夫妻はジョージ・ネルソンに出会いハーマンミラーから多くの革新的なプロダクトを発表。

そしてサーリネンは双頭のファニチャーブランドであるノルから美しいプロダクトを発表したのです。(画像は同じくノルの420 ワイヤーチェア。折角なので一緒に収めさせて頂きました。)

当時ノルで経営を担っていたのは自身もデザイナーであったフローレンス・ノル。彼女もクランブルックで学んでいます。

実は父親のエリエルと義理の父娘といえる間柄であったフローレンス。親交のあったエーロに家具のデザインを依頼し、それに対して生まれたののは3つのモデル。#70、#71、そして今回の#72。

ラウンジチェアとして人気のあるウームチェア(#70)、ダイニングチェアとして使う事の出来るアームチェア(#71)、そしてサイドチェア(#72)。

どれも包み込むような座り心地を持ち、背もたれの下方にはオーガニックチェアに共通するような空間があるのが特徴的です。

多くのカタログ写真に使われていた#72。背もたれから座面まで全て張りぐるみのものから、背もたれがFRP(繊維強化プラスティック)のもの。脚部もスチールロッドからプライウッドレッグ、4本脚のスイベルと当時多くのバリエーションをもっていた事が分かります。

今回は背もたれがFRPのもの。クッションが付く張りぐるみと比べてシルエットが際立っています。背もたれに身体を預けた時、最初に荷重が掛かる縁には柔らかな折り返しがあり、光の加減で変わる照り返しもまた特別な雰囲気を与えてくれます。

背もたれひとつから通じてしまう、彫刻家と言えるほどの造形美。サーリネンのもう一つの傑作チューリップでも感じる事が出来ますが、このシームレスなかたちの中で付く柔らかなカーブは唯一無二。

綺麗な面は艶やかで、ほんのりと水を纏っているかのよう。手元に引き寄せ、寛ぐ事の出来る家具がこんなにも美しい。エーロのそんな実力を存分に楽しめる名脚です。


アメリカのミズーリ州セントルイスには、エーロが設計した「ゲートウェイアーチ」という建築物があります。ミッドセンチュリーのただなかで放っていたエネルギーの煌めきは地域のシンボルとなり、50年以上たった今でも人々の心のよりどころ。

アメリカには気軽に通う事は出来ませんが、エーロが見通していた価値観を感じる事の出来るチェアが用賀店に来てくれました。是非この機会に、その美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 


ノル Knoll エーロ・サーリネン Eero Saarinen エグゼクティヴ #72 サイドチェア FRPシェル PVCシート メタルベース 50-60's ビンテージ ~その裏側に何を見る~

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