Carl Hansen & Son
CH88T
作品としてのデザインではなく、実用性を共存させた家具としてのデザイン。
人体と触れる面積の広い家具、チェアにはキャビネットやテーブルとはまた違った意味でのデザインを与えなければなりません。
見た目の美しさと座り心地の融合を追い求め続けた結果、あるデザイナーは生涯に500以上ものチェアを手掛けることになります。
ピーコックチェアやYチェア、そしてザ・チェア。
その殆どが名作と称され今尚多くのファンを魅了し続けています。
本日紹介させて頂くのは椅子の巨匠が独自の哲学を持って完成させた名プロダクトです。
軽やかな名作
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デンマークデザイン界において最も創造性と独創性に溢れたデザイナー、ハンス・J・ ウェグナー。
今回ご紹介させて頂くのはウェグナーが手掛けた名作であり代表的作品の一つ。
ダイニングチェア、CT88Tです。
家具をよく理解し、生活の道具として常に使いやすさを忘れない。
ウェグナーのデザインスタイルはこのように称されています。
美しいフォルムに隠された実用性はまさにデニッシュモダンの代名詞。
素晴らしい造形を持つこのチェアにも圧倒的な心地が与えられています。
1955年。
スウェーデンで開催されたH55 (ヘルシンボリ国際博覧会) に出展するためにデザインされたCH88T。
木材とスチール脚による軽やかな佇まいは人々に衝撃を与えました。
しかしながら当時発表されたのは脚部にカラーリングを施したプロトタイプのみ。
このチェアが公に姿を現したのは約半世紀も後、ウェグナー生誕100周年の2014年でした。
シンプルでエレガントなフォルム。
ミニマルなフォルムながらあたたかみある質感。
それらを支える直線的なスチールフレームは対照的で、随所にウェグナーならではのセンスを感じさせます。
心地良い座り心地もウェグナーデザインの特徴。
最小限のパーツが持つホールド感には感動すら覚えます。
ウェグナーはダイニングチェアにはアームは不要とも考えていたそう。
しかしながらこのチェアには美しいアームが添えられています。
くつろぐ為にはやはりアームが必要とも考えたウェグナーは程よい長さのアームをこのチェアに採用しました。
深く腰掛けてゆったりと、浅く腰掛けてラフに。
テーブルに気持ちよく差し込むことが出来るこのアームは様々な環境にすんなりと馴染みます。
当たり前のように使い心地が伴うデザイン。
それは、彼がデザイナーである前に一流の家具職人であったことが要因の一つです。
使用する材料を知り尽くした上で、材料の特徴を最大限に活かす。
生産が行われる生産工場の技術特性までを把握しており、そのすべてがデザインに反映されていたと言われています。
巨匠が手掛けた軽やかな一脚。
他に無い特別な一脚です。