Carl Hansen & Son
Mini Bear CH72 2P Sofa
デンマークのデザイン界を代表する巨匠と言えば「アルネ・ヤコブセン」、「フィン・ユール 」等、imptionではお馴染みですが「ハンス・J・ウェグナー Hans J. Wegner」もその1人。
生涯に500脚以上もの椅子を生み出し、その数多くが名作椅子として知られており、北欧デザインを語る上では欠かすことができないでしょう。
今回はそんな彼が生み出した名作の内の1つをご紹介します。
半世紀を経て蘇る名プロダクト
ウェグナーの物作りのベースにあるのは’’使用する木材に対する深い造詣や追求心’’。
彼が手掛ける作品は独創的なデザインの中に光る美しいフォルムが印象的です。これは家具職人としての豊富な知識と高度な技術を持つ彼だからこそ成せる賜物なのでしょう。
こちらは1952年にコペンハーゲンの百貨店’’マガジン・デュ・ノール’’の家具展で発表された「ベアチェア」シリーズの1つ「CH72」、通称’’ミニベア’’。
正に’’熊’’が手を広げているフォルムから名前が付けられました。名前の付けられた理由が可愛らしくなんだか微笑ましくなります。
名前の可愛らしさとは異なり、背もたれからアームレストまで流れる美しい曲線は高度な張地技術が見て取れます。
発表された当初は「APストーレン AP Stolen」社によって製造。張りの技術が優れていた為、ウェグナーがデザインしたチェアを多く手掛けていました。
しかし惜しまれつつも1977年に廃業してしまい、その製造がストップ。入手困難な大変希少なプロダクトとなり、その価格は一時、数百万という値が付いたことも。
根強いファンからの切望もあり2018年に「カールハンセン&サン Carl Hansen & Son」社から復刻という形で再販されています。
50年もの歳月を経て再び目にすることが出来るのは多くの人々を魅了するディテールに拘ったクラフトマンシップも一つではないでしょうか。
アームの先の滑らかなハンドルには溝が設けられており、簡単に移動させられるだけでなく、一番手が触れるアームレスト先の汚れを防いでくれる効果も。
こう言った細かなところにもウェグナーのデザイナー、職人としての物作りへの高い美意識が感じられます。
CH72が発表された1950年代のデンマークでは各地に高層住宅が建てられており、コンパクトで機能を重視した家具が求められていました。
そんな限られた居住空間でも使用できるコンパクトかつデザイン性の高い機能主義的なプロダクトとして生み出されたという背景があります。
パッと見た時にうける印象は存在感のあるソファと思われる方も多いかもしれませんが幅130cm、奥行72cm、高さ62cmというサイズ。
それは現代の日本の住環境にも通ずるデザインなのだと思います。
いかがでしたでしょうか?
半世紀以上も多くの人々を魅了する’’熊の手’’。可愛らしいだけでなく職人としてのウェグナーの裏打ちされた高度な技術によるCH72。
どんな角度から見ても美しいと感じる緩やかな曲線と圧迫感はなくともしっかりと存在感は残したデザイン。
この先もきっと途絶えることなく多くの人々に愛されていくタイムレスな1台です。