Cassina
699 SUPERLEGGERA
世の中には様々なものが溢れていますが、「世界一」という言葉を名乗れるのはただ一つのみ(それがどんな世界一なのかにもよりますが)。
その言葉をかつて冠しながらも、その言葉をそばに置いてしまうような美しさを持つチェアが入荷致しましたので、今回ご紹介させて頂きます。
よろしければその美しさを、一緒に楽しんで頂ければ幸いです。
歴史の重みを知るひと、イタリアと共に


今回は、イタリアから世界へとインテリアシーンを牽引するトップブランド、カッシーナによる1脚。
1927年にチェーザレとウンベルトのカッシーナ兄弟によって設立されたこの企業は、様々な時代の荒波を受けながらもその実直な歩みを止めず、時代を超える古き良さと、新しく生まれる良さを持ちながら進み続ける稀有なファニチャーブランドとなっています。


モダンデザインの殿堂とも言えるル・コルビジェやピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ぺリアンといった巨匠達とは直接コンタクトを取りLCシリーズのライセンスを取得。
その他にもデ・スティルの筆頭ヘリット・T・リートフェルト、アメリカの懐の広さを感じさせるフランク・ロイド・ライト、アーツアンドクラフツからアールヌーヴォーと劇的なデザイン運動を駆け抜けたチャールズ・レニー・マッキントッシュ等、時代を代表する建築家・デザイナーのプロダクトを今に作り続ける事が出来るブランドは他に挙げる事が難しい程。
その中でも、特別な立ち位置にいた建築家・デザイナーが今回の椅子をデザインしています。

その名はジオ・ポンティ(1891-1979)。イタリア建築・デザインの父と称される人物です。現代に愛される名窯ジノリからのキャリアをはじめ、デザインの書籍として名高い「DOMUS」を創刊、そしてプロダクトデザインの金字塔「コンパッソ・ドーロ」をこの椅子で受賞しています。

デザインの基礎を作り上げたと評価される氏の特徴は、モダンな造形と歴史に紡がれた要素の融合。
昨今では敬遠されがちな、細さやダイナミックな造形から導かれるメリハリのある美しさ。
ポストモダンのように「モダンの先」を求めたデザインとは異なり、歴史の中で紡がれたディティールを纏ったモダンのかたちは、どこか安心する事の出来る温かみを隠し持っているのです。


モチーフとしてはイタリアの北西部の主要都市ジェノバから海沿いにやや東へ向かった土地、キアヴァリで生まれるキアヴァリチェア。1796年にその土地の知識人たちの集まりから挑戦が生まれ、1800年には「カンパニーノ」という最古のモデルが誕生。
細く、軽く、流麗でエレガント。実用を満たした上で挑まれる装飾とシェイプアップは、正に「粋」。吟味した素材と熟練した職人の技量が必要とされるキアヴァリチェアはアンティークから現行品まで、今なお愛されている名品です。


キアヴァリチェアをモチーフに、ジオ・ポンティというフィルターを通して生まれた699 スーパーレジェーラ。
キアヴァリチェアが挽き物のようなリズムのあるスポークに流れる様な脚部と、柔らかな形が有機的な印象を与えているのに対して、直線的な構造が良い意味で無機的(モダン)な印象を与えます。

それを可能にしているのが、三角柱状のフレームと巧みな計算、そして素材。
主材のアッシュは強度と共に粘りがあり、日本ではタモという名前で野球のバット等に用いられる事もある樹種。



構造はしっかりはっきり。背もたれはもたれた際に2本の笠木で「面」として荷重を受けれられるように折れ線のように角度が付いています。そして脚部は前後に向けて踏ん張りが利くようにわずかに開きが付けられています。
これがストレートに落ちる脚であったなら、前後に荷重が掛かり過ぎた時に破損に繋がりやすくなってしまいます。繊細であるならなおさらです。




そして三角柱。座面に繋がる三角形の頂点は椅子の中心から外れるように前後に向いています。
座面の中央に発生する、一番強い荷重を受け止めるところを三角の底辺、すなわち広い面にする事で、円柱よりも力の伝わり方を一定にするという意図があると思われます。

昔ながらの工夫を知り、それに建築家らしい形や構造の仕組みをディティールとして取り入れる。
他には無いメリハリのあるモダンなシルエットを獲得しただけではなく、通常のキアヴァリチェアが2~4kgほどとされているのに対してスーパーレジェーラはおおよそ1.7kg。数値だけを求めるのでは無く、伝統に自分の知見と「粋」を加えたものが結果として現れた。
そう考えると、この椅子がとても特別なものに思えてきます。

先述のコンパッソ・ドーロ、そしてモダンデザインの殿堂 MoMAへの収蔵。ジオ・ポンティも、彼自身がデザインした3つの傑作の中に入ると太鼓判を押したこのチェア。 建築物を毎日眺める事は難しいですが、このチェアであれば毎日手で触れ、使いながらその思索を感じる事が出来ます。
手を通し、持ち上げる時に自分の心も持ち上がる。そんな歴史的な1脚を、是非この機会に楽しんでみてはいかがでしょうか。











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