Evans Products
EAMES LEG SPLINT
by Charles & Ray Eames
家具やインテリアに魅了されるきっかけとなる“特別な一脚”を持つ方は少なくありません。私にとってそれは、柳宗理バタフライスツールとの出会いでした。初めて目にしたときの驚きは今も鮮明に残っています。「木材がここまでしなやかに曲がるの!?」「どのような構造で成り立っているの!?」と、その美しさと技術に心を奪われ、以来、家具の世界に深く興味を持つようになりました。
イームズデザインの原点


今回ご紹介するのは、そのようなモダンデザインの流れを語るうえで欠かすことのできない、極めて貴重な一品です。アメリカの企業" Evans Products Company(エヴァンス プロダクツ) "によって製造された、『 Eames Leg Splint(イームズ レッグスプリント) 』。これは、成形合板技術の発展において重要な役割を果たしたプロダクトであり、後の名作椅子誕生の「原点」と称される存在です。



デザインを手がけたのは、20世紀を代表するデザイナーである Charles Eames と Ray Eames の夫妻。彼らは、Hans J. Wegner から「20世紀で最も偉大なデザイナー」と称されるほどの評価を受けています。一般的には、シェルチェアやラウンジチェアなどの名作で知られていますが、その礎となったのがこの『レッグスプリント』になります。




彼らはエーロ・サーリネンと共に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコンペティションにおいて「三次元曲面を持つプライウッドの椅子」を発表し、高い評価を得ました。その後、成形合板技術の研究をさらに進めていく中で、第二次世界大戦が勃発。この技術は医療分野に応用され、負傷兵のための脚部固定具としてレッグスプリントが開発・量産されました。



軽量で強度があり、かつ人体の曲面に沿うよう設計されたこのプロダクトは、実用性と機能美を兼ね備えた画期的なものでした。戦時中には約15万体が製造されたとも言われ、その精度と技術は飛躍的に向上していきます。

そして戦後、この経験は家具デザインへと還元され、1945年には名作チェアであるLCWやDCWが誕生。これらは木製家具の概念を大きく覆し、世界中のデザイナーに多大な影響を与えました。日本においても、その影響は大きく、LCWの思想をルーツとして、先述のバタフライスツールが生まれたとされています。

今回の個体は、台座付きで自立可能な仕様となっており、現在では医療器具としてではなく、コレクションや展示を目的としたアートピースとして扱われています。その有機的なフォルムは、人体に寄り添う機能から生まれたものでありながら、同時に彫刻作品のような美しさを湛えています。

実際に、このレッグスプリントは造形的価値も高く評価され、現代アートの文脈でも取り上げられています。例えば、Martin Boyceによるインスタレーション作品『Phantom and Fall』でもモチーフとして使用されており、その存在感は単なるプロダクトを超えた領域へと昇華されています。

ミッドセンチュリーデザインの名作家具と並べても違和感なく調和し、空間に確かな個性と奥行きを与えてくれる本作。機能から生まれ、やがて美へと昇華したその姿には、デザインの本質とも言える“思想”と“情熱”が宿っています。
デザインの歴史を傍らに置く贅沢を、ぜひご自宅でご堪能ください。































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