Edsby Verken
Fanett Chair
世の中に椅子は数多く、それだけ多くの選択肢があるという事。
それはすなわち、椅子にこだわりを持つ人が多いという事。
そして、人は椅子を自分を映す鏡のように思っているという事でもあります。
控えめながら美しい、北欧のイス
それでも、実際的には自分の周りにある環境によって、おのずと選択肢は限られてきます。
そもそも動かせないような、巨石や巨木を掘り出した王のための椅子。その場所から動く必要のない権威者だからこそ可能なものですね。
そもそも「椅子」という形を借りた、アート作品の場合。
それはそれで楽しいですが、概念的な話であり、腰かけて身体を休めるという本分からは遠く離れています。
多くの人が便利に使える事。
差し入れが出来て、身体の構造を考えた設計である事。
丈夫で、安心して使える事。
人間という「動物」が安心出来る温もりがあるという事。
歳を重ねた人でも毛嫌いせずに使える「積み重ね」の上にある事。
暮らしに新鮮さを求める人々が手に取れる「洗練」を纏っている事。
この椅子をつくる企業が求める利益に沿う工程である事。
デザイナーが自身のポリシーに沿ったデザインを実践出来る事。
それらを全て備えたこの椅子は、そうあるべくして多くの人の現身(うつしみ)として選ばれました。
スウェーデンの家具とスキー用具を製造していたEDSBY社。スキー業界から撤退をする際に不要になったスキー用具のためのバーチ材。
それを北欧家具らしい葉巻型のフレームに使い、見た目は軽やかなウィンザーチェアのスポーク。座面は強度と軽さを備えたチークのプライウッドを採用する事で、女性やこどもでも簡単に持ち運べる重量となりました。
フィンランド土着の椅子をリデザインしていた、デザイナーのイルマリ・タピオヴァーラ。サウナ椅子に着想を得たピルッカシリーズ等はアルテックから復刻されていますが、ファネットはビンテージのみ。
これは勝手な想像ですが、復刻するまでもなく沢山の人が当時使っていたのではないか。ビンテージになって、使い継がれながら今に至った。そう考えるとデザイナー冥利に尽きるのではないでしょうか。
あなたもきっと、目にして掛けてみたら思うはず。
その当時、一生懸命になって生み出された椅子のかがやき。
使い継がれたビンテージの良さを、是非お手元で使いながら感じてみてください。