ERCOL
HOOPBACK CHAIR
雨だけなら、風だけなら良くはないけど我慢できる。
でも両方いっぺんは、多くの人の心をくじけさせてしまうのではないでしょうか。
季節事とは言え、穏やかな天気であればよいのになあと思ってしまいますね。
今回のご紹介は、置いた場所の雰囲気を穏やかにしてくれる不思議な1脚。
宜しければ是非最後までお付き合い頂けますと幸いです。
美しい「ファクトリーブランド」
今回はイギリスのファニチャーブランド、アーコール | ERCOLのダイニングチェア。
アーコールは1920年、イギリスのハイウィッカムに設立されました。
イタリアの中程、アドリア海側にあるサンタンジェロ・イン・ヴァードという小さな町で生まれた創業者、ルシアン・アーコラーニ。
10歳ごろには海を渡り、異なる言葉に苦労しながらもウッドワーカーであった父の勧めもありドローイング、そして家具造りを学びます。
様々な苦労や人々の繋がりもあり、1920年に立ち上げられたブランド アーコールは先日創業100年という節目を迎えましたが、古き名作と現代の挑戦を兼ね備えて続いている希少な企業。
その続いている理由を感じる事が出来るビンテージが、今回のご紹介です。
刻印からおおよそ1960年代の製造と思われるフープバックチェア。フープ(輪っか)という名の通り、背もたれを縁取るフレームが特徴的な1脚です。
四角い棒材を蒸し上げる事で出来上がる曲木のフレーム。無垢材を切断したり削ったりという工程が不要になる事で、丈夫で効率の良いデザインが可能に。
スポークと呼ばれるスティックを差し込み強度を増し、軽やかで見通しの良いシートに仕上げています。
フレームはビーチ(ブナ)材。色づいた黄色味が良い塩梅に、座面は木目が豊かなエルム(ニレ)材の柔らかなコントラスト。
座面は柔らかくおしりの形に合わせて座繰りという加工が施されていますので、板座なのにスッとフィットする、ちょっと不思議な座り心地を楽しむ事が出来ます。
フレームは四角くスティックは丸く。脚先は動物の脚のようにリズムのある太さ。
「木」という一つの素材から、少しずつ異なるディティールを組み合わせて生まれたこの椅子は、派手さとは無縁かも知れませんが手で触れるたび、眺める度、使う度にその魅力を楽しめる年月を楽しめる1脚です。
イギリスの学校で使われていたアーコールのスタッキングチェア。人気のアパレルデザイナー、マーガレット・ハウエルがその復刻を手掛けて話題になりましたが、幼い頃に自らが触れた「暮らしに馴染んだ美しさ」は忘れる事が出来なかったのかも知れません。
多くのイギリス人を支えた美しいビンテージ。是非この機会に楽しんでみてはいかがでしょうか。