Ercol
Goldsmith Chair
英国のビンテージチェアは、その多様なデザインで広く知られています。
インダストリアルなアメリカンビンテージや、エレガントなフランスビンテージのようなスタイルもあり、そのデザインは他の地域のチェアとも共通点が見られます。
英国の家具は長い歴史を持ち、その伝統的なデザインは古代から受け継がれ、どのチェアにも微かな上品さが漂っています。
今回は、その伝統を尊重しつつも新たな挑戦を追求するブランドから、特に人気のある一脚をご紹介します。
色褪せることのない本物のビンテージ
英国ミッドセンチュリー時代を代表する家具メーカーとして名高いアーコール。
その歴史は1920年にルシアン・アーコラーニによって始まりました。
彼のビジョンは、伝統を重んじながらも、現代の技術とデザインを大胆に取り入れるというものでした。
その家具はシンプルで美しさが際立ち、時折北欧家具を思わせるフォルムも見られます。
今回ご紹介するのは、アーコール社の中でも特に人気の高いモデル、ゴールドスミスチェア。
特徴は無垢の木材を使った「曲木」という技術で作られた一切引っ掛かりの無い滑らかなフォルム。
曲木は、高温の蒸気で木材を柔らかくし、優雅なカーブを形成する技術で、アーコールはこの技術を駆使してウィンザーチェアの製造に成功しました。
そしてすらっと伸びた背もたれのハイバックデザインは体を包み込み、心地よい着座感を提供してくれます。
また、座面はオリジナルよりも大きく作られており、さらなる快適さを追求しています。
もう一つの魅力は用いられている素材にあります。
使用されているエルム材はかつてイギリスに豊富に自生していましたが、1970年代に悪性の病気が蔓延し、ほぼ壊滅状態になってしまいました。
そのため、かつて多く自生していたエルム材は、現在では貴重な素材となっています。
ブロンドの色合いと微かな甘さが漂う芳香を持ち、その爽やかな風合いは今でもファンを魅了しています。
ビンテージ家具の最大の魅力は、その時代ごとに異なる個性と、時間とともに増していく味わいにあります。
今回ご紹介したゴールドスミスは、そのデザインと素材の美しさ、そしてヴィンテージならではの存在感は年代や使用状況によってまったく異なる表情を見せるため、コレクターやインテリア愛好家にとって特別な存在です。
手入れの行き届いたヴィンテージ品を選ぶことで、ただの椅子ではなく、歴史を感じさせる逸品を手に入れることができるのです。
ダメージも経年も、ふたつとない魅力となり暮らしに溶け込んでくれます。