Henri Matisse
LA POMPADOUR 1951
美術館へ行ったら、ポストカードを買う派です。
相当に心動かされたときは図録を、それに届かないときはポストカードを。訪れた記録として気に入った作品を1枚だけ連れて帰ります。
フレームに入れて飾ることもあるのですが、ほとんどはそのまま保管。収集して満足というやつです。
大胆に、単純に。
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たぶん、マティスのポストカードはまだありません。でもどこかしらで目にしたことのある作品の数々。思い浮かぶのは、カラフルな絵画たちです。
「色彩の魔術師」という異名をもつマティス。同時期に活躍したピカソがフォルムの表現に革命を起こしたように、感覚や感情を色で表現する手法により色彩の表現を解き放ちました。
肖像画ひとつとっても、モチーフは写実に描きながら色彩が派手で不規則。その型にはまらない作風から、フォーブ(野獣)と呼ばれ始めます。
ただ、野獣に込められた意味は称賛ではなく酷評。野蛮な色彩を用いた絵。マティス自身はそれを嫌い、野獣派を3年ほど率いたのち落ち着いた静かな作品を描くようになっていくのです。
1951年、ヴェルサイユ宮殿修復の資金集めを目的として制作された16点のリトグラフのひとつとして制作された「ラ・ポンパドール | LA POMPADOUR 1951」。
魔術師や獣を感じさせることのない、極めてシンプルで繊細な線描画です。
あらゆる影響を受けたのち、「形体ではなく色彩でデッサンをする」といった感覚を強くしたマティス。形体の単純化がどんどんすすむ中で描かれたポートレイトは、大胆に削られていきます。
ただもともと古典的な写実主義を学んでいるからこそ、その筆致は卓越し、どこか走りがきにも思える堂堂たるラインながら見る者を魅了します。
そして今回は、フレームにもオリジナリティー溢れたペイントが施された、アーティスティックな額装品。
深い若草色の四隅に描かれた花模様が、シンプルなデッサンに華を添えているかのようです。
IDEE(イデー)でも取り扱われるなど、絵画(リトグラフ)としてだけでなくポスターとしても多くの人に愛されるマティス。最もインテリアに取り入れられている画家といっても過言ではないかもしれません。
魔術師時代も野獣時代も捨てがたいですが、その集大成ともいえる単純化の頂点を極めた傑作が、知的好奇心を刺激します。
季節は秋。壁面を彩るアートピースで芸術とインテリアを楽しみたいものです。